実演生物学:Ch2. -6A,:パラフィン切片HE染色標本(ニジマス稚魚)の作製法
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<1)整形/台木付け、2)基本操作、3)面出し/本切り、4)接着乾燥>
 1. 本工程の概要
 2. パラフィンブロックの整形:図20
 3. パラフィンブロックの台木付け:図20
 4. ミクロトームの基本操作法と安全確認:図24など
   4-1)ミクロトーム操作における安全対策
   4-2)ミクロトームの基本操作
 5. 試料の切り出し(薄切)
   回転式ミクロトームによるパラフィンリボンの作成
   5-1)荒切り・面出しと試料状態の検査
   5-2)本切り、パラフィンリボン(連続切片)の作成

   5-3)連続切片作成のコツ

 6. パラフィンリボンの伸展(42℃水盤)とスライドガラスへの貼付け
 7. トラブルシューティング(頻度の高い事例に対する考え方)
 8. 模式図とボタン番号の関係


<1. 本工程の概要>
 本工程(3rd Stage)は上記の4項目であるが、その構成項目を以下に記す。

 1)パラフィンブロックの分割、整形、台木付け:図20

    1.  2nd Stageで作成した「試料を包埋したパラフィンブロック」を適切な大きさに小分けする。 更に適切な形状に「整形」する。
    2. ミクロトームに装着固定するため整形したブロックを「台木」に溶融パラフィンで「接着」する。

 2)ミクロトームの基本操作と安全確認:図24

    1. ミクロトームの操作手順に準じ、その構造と基本操作法を確認する。
    2. 安全操作のための要点を確認する。

 3)試料面出し、本切り、連続切片の作成:図27, 28, 29,30

    1. セットした試料ブロックの「荒切り、面出し」を行なう。
    2. 包埋試料のでき具合を確認する。
    3. 4μm薄切による本切り(連続切片の作成):パラフィンリボンの作成を行なう。
    4. 切り出したパラフィンリボンの管理法を確認する。

 4)パラフィンリボンの伸展、スライドガラスへの貼付け、接着乾燥:図33、34

    1. パラフィン切片のシワを延ばすため約42℃水盤を利用しリボンの伸展操作を行なう。
    2. 加熱したニクロム線(エーゼ)を利用して、伸展リボンを個別の切片として切取る。
    3. スライドガラスに適切な切片を貼付け、乾燥させる。
    4. 完成したプレパラートはプレパラボックへ収納する。

 補足)トラブルシューティング:
   「切り出し」時に生じる課題と対処法:図31,32
・・・・・・・・

「ミクロトームによるパラフィン包埋試料の薄切操作」では実技指導を受けるなどにより、関連する「コツ」を修得することも肝要である。また、参考書等も適時参照し、実験者の実施環境に適した方法などを検討する事も重要である。

例えば、
 病理組織学標本作成技術 (上、下巻) (1981)
 病理技術マニュアル3 日本病理学会 編:医歯薬出版 ¥7500


<2. パラフィンブロックの整形:図20>

 図24に示す回転式ミクロトーム(標準タイプ)を使用する時、整形したパラフィンブロックの大きさは「横幅3cm、高さ1.5cm程度」以下と考える(基本的にはできるだけ小さい方が良い)。但し、整形するその大きさは包埋した試料のサイズや性質に依存する。しかし、いずれにしても、包埋試料の上下左右にそれぞれ5mm程度の余白(パラフィンだけの部分)が必要、と考える。ナイフでパラフィンブロックをトリミングする前に整形する大きさを確認する。

  1. パラフィンブロック(図20-A)を包埋ケースから取り出し、以下の要領で、小刀や大型文具ナイフ(替え刃式)を用い、大まかなブロックとする。ナイフで無理がある時には小型のノコギリを用いる。
  2. 小刀でパラフィン表面に鋭角のV字型の溝を作り、チョコレートのように簡単に折り割れるようにする。切り取ったブロックは、最終的なサイズを確認しながら「釘」などの先端でパラフィン表面に四角形を描く。最終的な大きさを考慮し「割切り」が難しい時には、小型のノコギリを用いて丁寧にブロックを作成する。
  3. ブロックの端から数ミリずつ小刀で押し切り(引き切り、のこぎり引きはダメ)、最終的なサイズまで整形する(長方形/直角四角形にする)。この時、分厚く切り落とすとパラフィンがランダムに割れる、歪みが入るので、必ず数ミリ単位で周囲からていねいに丁寧に切り出す。切り出したブロック側面が歪みなどで白く濁るような事がないように小刀を工夫して使用する。適切な大きさの立方体(四角形:図20-B)とする。
     (トリミング時に生じるパラフィンくずは再利用するので回収する)
  4. 試料ブロックの切り出し/整形は一度に幾つも作っては行けない。実際にミクロトームで薄切し、ブロックの大きさの適正などを確認し、改めてブロックサイズなどを検討し適時作成する。


<3. パラフィンブロックの台木付け:図20>

  1. 適切なサイズとしたパラフィンブロックの「表面:薄切を開始する面」は、包埋の時の底面、つまり試料が見える平面である。裏面は試料の厚さの関係から時折凹凸ができているので、その時は、試料に影響を与えない範囲で平坦に切り取る。又は溶融パラフィンを垂らして凸凹部分を平坦にする。
  2. アルコールランプやガスバーの火炎でペインティングナイフを加熱加温し、くずパラフィンをナイフに載せ溶かす。それを台木に塗り込む。充分に木製の台木にパラフィンをしみ込ませたら、再度加温したナイフをパラフィンブロックの裏面に押し当てて、裏面を少し溶融させた後、ナイフを台木とブロックでサンドイッチするような要領で両面を均等に溶融後、ナイフを引き抜き、両面を張合わせる。接着する。
  3. 台木とパラフィンブロックの接着面には多分隙間があるので、ナイフを加温し、接着部/辺にナイフの辺を押し当てて、溶融接着する。大きな隙間の場合には溶融パラフィンを流し込む。
  4. 充分に冷却固化させ接着強度を保持してから次の工程へ進む。


< 4. ミクロトームの基本操作法と安全確認:図24など>

4-1)ミクロトーム操作における安全対策

  1. ナイフの刃(替え刃)を取り付けた状態(むき出し)のミクロトームを放置してはいけない(他人の安全にも配慮する)。
  2. ミクロトームにナイフの刃(替え刃)が付いている状態で「試料/ブロックに素手で触れるや交換」などを行ってはいけない(行う時はナイフの替え刃を必ず取り外すこと)。
  3. ナイフフォルダは刃の有無に関わらずテーブルに放置してはならない(必ずナイフボックスに収納する)。
  4. 替え刃の交換はミクロトームにナイフフォルダがセットされた状態で行う(常に定位置で行う習慣をつける)。

4-2)ミクロトームの基本操作

 ミクロトームを適切な場所に配置し、模式図を参照しながら基本操作を習得する。安全操作には充分に配慮する(操作は必ず1人で行ない、横から他人が手を出す、機械に触れることはあってはならない)。ミクロトームは、通常、模式図の左が手前、ハンドル「K」が右にくるように設置する。

  1. ナイフフォルダと替え刃の確認/取り外し(図のA: 替え刃ナイフと固定ネジ)。
     ミクロトーム本体に「ナイフフォルダ (F)」が装着されていないことを確認する。付いている時には、「替え刃」付きの事もあるので、替え刃に触れないように充分注意し「固定ネジ (H)」2本を緩め、ナイフフォルダ「F」を取り外し、ナイフフォルダの「収納ボックス」へ入れる/戻す。ナイフ収納ボックスは安全のためテーブルの中央に置く(作業台の周辺に置いてはならない)。 
  2. 「試料-固定部」の始動位置への移動(図のB: [ツメ]と試料位置設定ハンドル)
     図に示す[ツメ]を外し、ミクロトームの裏面にある「B」のハンドルを回して「試料-固定部」をスタートポジションに戻す(Bのハンドルを回転させると回す方向により試料固定部が図の左か右に動くが、図の右方向へ移動させる(後退させる)。スタートポジションまで移動させたら数回逆回し終了。
  3. 試料ブロックの固定(図のC: 試料固定ネジ)
     上記の1.で作成した試料ブロックの「台木」を試料固定部にセットし、「C」のネジを回し強く固定する。試料の長辺を水平として固定する。台木は、金属でできている固定部から少しだけ前に出るようにセットする。
  4. 試料ブロックの角度調節(図のD: 試料角度固定ネジ)
     試料の切り出し面を考慮し、試料ブロックの角度を調節し、角度ネジで強く固定する。
  5. ナイフフォルダの取り付け(図のE: ナイフフォルダステージ)
     替え刃の付いてない「ナイフフォルダ」をミクロトームに取り付け、ネジ「H」で軽く固定する。替え刃が付いている時には、ナイフフォルダを軽く固定した後に「替え刃固定ネジ(A)」を緩め替え刃を取り外す。取り外した替え刃は「荒切り用の替え刃保存ケース」に保存する。
  6. 刃角の調整とナイフフォルダの固定(図のF: ナイフフォルダ、G: ナイフフォルダ固定ノブ) 
     刃の角度(刃角)が12度で固定されるように、[I]の刃角表示メモリを確認しながら、ナイフフォルダの固定ネジ[H]を左右交互に軽く絞める。メモリで12度が確認できたら「I」の固定ネジを絞めた後に、「H」のネジを強く絞める。
  7. ナイフステージの移動(図のGナイフステージ固定ノブとEナイフフォルダステージ)
     「G」を緩めた状態で「E」のナイフステージを両手で動かし(前後左右に移動する)、試料ブロックの数ミリ前に移動し「G」の固定ノブで軽く固定する。
     ナイフの替え刃は左右に長いので「左側寄り刃」と「右側寄り刃」の2カ所を「本切り用」と考える。そのため、ナイフフォルダの「替え刃」が装着される位置を確認した後、ノブ「G」を外し、ナイフステージを左右に調整する(試料ブロックは替え刃位置の左寄り又は右寄りとなる)。ノブ「G」を固定する。
  8. 試料ブロックの位置/角度の確認(図のD: 試料角度固定ネジ)
     「L」のハンドル固定ノブを外して、ハンドル「K」をゆっくり回し、試料ブロックがナイフフォルダにぶつからないことを確認する(ぶつかりそうになったら中止し、「G」を緩め適切な位置まで後退させる)。確認後、試料ブロックの垂直移動による面がほぼ希望する角度になっている事を確認する。つまり試料の断面は「C」の角度固定で決定される。試料ブロックから数ミリの隙間になるように、「ツメ」を外し、「K」のハンドルを回して隙間を調整する。最後に「ツメ」を戻す。
  9. 固定具の確認(図のG, H, Cの固定ネジ、ノブ)
     替え刃を取り付ける前に、これまで確認してきた各種の固定ネジを再度強く絞める。この時座って行なうと締めが弱くなるので、立ちあがって行なう(これ本当!)。
  10. ナイフフォルダの裏側の確認(図のF:ナイフフォルダの裏側、特に替え刃取り付け位置)
     替え刃を装着する前には、ナイフフォルダの裏側にパラフィンクズが付着していない事を確認する。付いていたら紙タオルなどで拭き取る、又は捨て替え刃でパラフィンクズをはぎ取る。
  11. 替え刃(荒切り用)の装着(図のH:ナイフ固定ネジ)
     替え刃固定ネジ(A)を緩め、「荒切り用の替え刃」をナイフフォルダの装着面に丁寧に置き、固定板でずれないように保持し、左右交互にネジを絞める。固定する。もちろん、替え刃にパラフィンクズが付着していない状態の替え刃を利用する。確認する。
    ・替え刃装着後は、試料固定部や試料ブロック、替え刃付近を手で触れてはいけない:厳禁(安全対策)・
  12. 荒切り幅(メモリ)の設定(図のJ:薄切幅/厚さ設定ダイアル)
     「荒切り」を開始するので、「J」のダイアルを回して16μmにメモリをセットする。
  13. 薄切前の準備:1)ナイフステージの空間に切りくずパラフィンの回収トレーをセットする(紙を凹型に折り、ナイフフォルダの下の空間にセットする)。2)作業スペースを確保し必要物品を正しく配置する(筆、取り紙、ナイフボックス

・・・・・・・・・

安全操作の補足:替え刃が装着された状態でミクロトームを放置しては行けない。短時間でも操作席から離れる時には、替え刃の上に「ナイフ装着中:危険」と大きく記した二つ折りの紙を載せ、他人の安全にも配慮する。
・・・準備完了。3.の「切り出し(面出し、本切り)」に移る・・・


<5. 試料の切り出し(薄切):回転式ミクロトームによるパラフィンリボンの作成>

 上記2.「ミクロトームの基本操作」は「試料の切り出し:切片作成」前の「必須工程」であるが、同時に「安全操作」に必要な「基本プロセス」でもある。但し、以下に解説する「切り出し」操作を理解しミクロトーム操作に慣れてくると「基本プロセス」の手順も時に順不同になりがちだが、ミクロトーム操作は「危険操作」であることを自戒し、「基本操作」の手順遵守は心掛けてほしい。
 また、切片作成にはトラブルも付き物である。切片作成が「思うように進まない、すぐ問題が生じる」という状態は、多くの場合、基本操作の不備に起因しているので、「基本操作」の重要性も理解してほしい。
 本節では、ミクロトームに固定された試料(パラフィンブロック)の薄切を行なう。工程は2段階、つまり、「荒切り/面出し」とこれに続く「本切り、連続切片(パラフィンリボン)」の作成である。その結果、作成されるリボン状に連なった約4μmのパラフィン連続切片は「回収と保存」となる。
 はじめに「荒切り、面出し」を行ないパラフィンブロック中の試料が「顔を出す(面出し)」まで薄切する。更に、パラフィンブロックの「四角形」がそのまま切り出される(薄切される)状態を作出する。次に面出しされた試料の状態を確認する。つまり、包埋試料が内部まで均質にパラフィン浸透し硝子面のようになっている事を確認する。この検査に合格したら「本切り」:希望する薄切幅(例えば4μm)でパラフィンブロックがパラフィンリボンとして連続切片化するようにする。更に、パラフィンリボンを丁寧に回収し保存する。以上の手順は以下の通りである。


5-1)荒切り・面出しと試料状態の検査

  1. 薄切幅16μm程度であることを再確認後、ハンドルを回し続け試料の面が「四角」として現れるまで切り続ける。薄切されるパラフィン切片(リボン)は取り払う事なく「面」が出るまで切り続ける。不用意に切り出したパラフィンリボンの除去と掃除は行なわない。
  2. 面が出てきたら、薄切幅のメモリを10μ以下にセットし少しづつ切り進む。
  3. 希望の面が出たら、筆を用いて、パラフィンクズ(リボン)を丁寧に取り除く。パラフィンくずをナイフフォルダや替え刃に押し付けるような操作は厳禁。
  4. 試料の断面を注意深く観察し、試料全体にパラフィンが均一に浸透している事を確認する。もし、白濁や、スカスカした部分、カサカサしている部分があれば、パラフィンが浸透していないので、そのブロックは本切りによる切片作成には適さない可能性があるので、必要に応じ操作を中止し、適切な試料を選び、2.の基本操作から再開する。中止した場合は替え刃を取り外してからパラフィンブロックを交換すること。安全には充分配慮する。

5-2)本切り、パラフィンリボン(連続切片)の作成

 「面出しと試料面の検査」が完了した試料ブロックは、本切り用の替え刃に交換した後、4μm薄切で、連続切片としてパラフィンリボンを作成する。調製する。
 試料切片が連続したパラフィンリボンとして切り出せたら、リボンは回収用紙(リボン台紙)にのせ、保管する。そのため、A4用紙の長辺が4等分になるよう短冊(リボン台紙)を作り、準備しておく。
 ある程度、連続切片(リボン)ができたらスライドガラスに貼付けるため、「4. 伸展貼付け」の操作を行なうが、その操作には慣れが必要なので、下記の本切り操作にあわせて、練習用の切片リボンも少し多めに作成しておく。

  1. 「ツメ」を外し、「B」のハンドルを回転させ、試料固定部を少しだけ後退させる。
  2. 「A」の替え刃ネジを緩め、荒切り替え刃を取り外し、ケースに収納する。
  3. ナイフフォルダの替え刃部の裏側にパラフィンくずが付着している場合には丁寧に「作業用の使用済み替え刃」などを用いて固着したパラフィンを取り除く。力を入れて取り除くとナイフの角度などがずれるので丁寧にていねいに行なう。
  4. 本切り用の替え刃をセットしネジで固定する(無理な圧力は加えない:ナイフ位置の保全のため)。補足:本切り用の替え刃は、左側と右側の2カ所の領域に区分して使用する。つまり、替え刃をナイフフォルダにセットする時、試料固定部の前には替え刃の左側又は右側が対応するようにセットする。替え刃には油性ペンなどで使用開始の目印を記入することも有効である。もちろん替え刃の裏側にくずパラフィンが固着しているような事はあってはならない。
  5. 薄切幅が4μmになるようにダイアルをセットし、ハンドルを回し、改めて丁寧に面出しを行なう。切り出したパラフィンリボンが刃先付近に付着しても「面」が出るまで放置する。不用意にパラフィンくずは取り払わないことが肝要である。
  6. 四角い「面」が出てきたら、不要のパラフィンリボンを、筆を回転させ丁寧に取除く。この時、パラフィンリボンをナイフや替え刃に押し付けてはいけない。
  7. 希望の面が出たら本切りを開始する。要領としては、数枚程度の切片をリボンとして切り出した後に、左手で筆を持ち、筆を回転させながら切片リボンの端を筆の腹に載せる。
  8. ハンドルをゆっくり回転させ試料ブロックが刃先にヒットし「本切りリボン」が切れ出したら、筆を少し軽く持ち上げ、リボンを金属フォルダから少し浮かせるような気持ちで「筆使い」を行なう。必要に応じ、スピードに合わせてリボンを移動させる。

5-3)連続切片作成のコツ

  1. 連続切片となる理由は、はじめに切り出した切片の上端(替え刃に付着している)の面(例えば4μm)に、次の切片の下端の面が押し付けられ圧着されるためである。よって、シワを作らないためには押し出している時に筆で持ち上げて抵抗を軽減することが重要である。
  2. パラフィン自体には静電気は生じないが、試料蛋白が替え刃の金属と接すると静電気を生じシワが生じる。そこで、上述の方法にあわせて、切り出し中、つまり切片が切れている間に口を近づけ息を吹きかけ静電気を防止すると切片は広く伸びたまま切り出せるので試してほしい。専門器具としては専用の「超音波式加湿器」が市販されているが、「息吹きかけ法」も有効である。

5-4)パラフィンリボン(連続切片)の回収と保存

  1. 10-20枚程度の連続切片リボンができたら、図30のように、リボンの下に紙を差し入れ、リボンを回収する(模式図参照)。
  2. 補足:リボンを長く作ることが目的ではない。リボンが伸びたら適度に紙(台紙)に回収し、番号を記し保存する。ある程度集まったら下記の伸展貼付けを行なう。
  3. 連続切片を回収した台紙には記録を記入後、箱など安置し保存することも可能である。

終了時の注意
  「切片リボンの作成」でミクロトーム操作が全てが終了したら、本切り用の替え刃は丁寧に扱い、「本切り替え刃」として自作の保存ケースで保管する。繰り返し使用が可能なので、次回も使用する。この時、使用中の領域(左側、又は右側)を明記しておく。状態も記入する。


<6. パラフィンリボンの伸展(42℃水盤)とスライドガラスへの貼付け>
(お湯表面で連続切片/リボンの伸展とスライドガラスへの貼付け)

 下記の要領でシワシワリボンをお湯の表面で伸展させる。更にスライドガラスに貼付ける。 そのときのアドバイス。

  1. スライド硝子の中央部に切片を貼付けるのではなく、多少、左右どちらかに偏って貼付ける。理由は、染色工程で染色つぼに入れる時に「偏り」がある、つまり、パラフィン切片が下の方に寄っている方が系列溶液に浸りやすく、また、液量も少なくてすむ。反対側の余った部分には標本ラベルを完成後に貼る、から。
  2. 切片には試料個体の「頭尾軸、背腹軸」があると思う。顕微鏡観察する時のことを考え、切片試料の貼付け方向にはこの観点から必然性を与える。ちなみに、顕微鏡にセットしたプレパラートは上下左右が反転して見える。
  3. パラフィン切片を伸展させる「水温:42℃〜44℃」は想像以上に重要・大切である。適切な温度が設定されていないとシワシワが伸びないので、充分温度には配慮する。温度計と温水ポットなどに熱湯を用意しておくと便利である。
  4. リポンの伸展、切り取り、貼付けには「慣れ」が必要なので、下記の本操作を行なう前に、捨てても良いリボンを沢山作っておいて、まずは練習すること。

<伸展貼付け操作法:お湯の上で>

  1. 少し深めのバットに約42℃のお湯を入れる(作る:深さ7cmくらい)。温度は重要。指を入れて数秒後すこし熱いな、という温度(42〜44℃)。
  2. 切り出しリボンを安置した用紙を手に取り、筆を回転させ端の方からリボンをすくい取り、リボン全体を持ち上げる。水面上に移動し下部先端を水面に下げる(この時上昇気流に注意する)。リボン先端がお湯に接するとリボンは自然に伸展する。自然に前へ流れ始める。あわてないこと。
  3. その速度に合わせリボンを下げると全体がきれいに伸びるはず。できるだけゆっくり動かす。
  4. 水面上でリボンが充分伸展したら伸展リボンの下にスライドガラスを差し込み、切片を持ち上げた後で、アルコールランプで熱した枝付き針/エーゼをお湯に浸け、スライドガラスを定規に使いパラフィンを切る。リボンは切れる。これは、ともかく練習して、自分なりのコツを掴む。
  5. 貼付けたスライド硝子はハシゴに並べて45℃の乾燥機(恒温庫)に一晩入れ、切片をスライドガラスに接着させる。乾燥後はプレパラボックスに保存する。

<7. トラブルシューティング(頻度の高い事例に対する考え方)>

「思ったように切れない」という原因の幾つかは、次のような事態に起因する。1)パラフィン未浸透、2)固定ネジのゆるみ、3)替え刃裏側のパラフィン固着、4)刃こぼれ、など。以下に解説する。

  1. パラフィン未浸透(パラフィン切片の試料部分が不均質に裂けてしまう):試料の面出しを行なった時点でバラフィンブロック中の試料の切り出し面が「カサカサしている」、つまり、均質にパラフィンが浸透していない時は、「本切り(切片リボン)」の作成は無理と考える。特に、骨組織の部分が不完全な場合(脱灰不足の時ははじめからやり直し)。→→→その他の理由で大きな気泡があり、連続切片になり難い場合にはパラフィン浸透工程に逆戻りして、再調製する(パラフィンブロックを溶解後、キシレンに入れ、・・・)。
  2. 固定ネジのゆるみ(均等な厚さに切れない、又は、切り出し面が波打つ、など)→→→ミクロトームの試料などの固定具ネジが緩んでいる。確認する。
  3. リボンの縦割れ→→→替え刃のウラにパラフィンが付着している。又は刃こぼれしている。→→→替え刃を取り外した後、替え刃フォルダの裏側に付着しているパラフィンをキムワイプなどで丁寧に拭き取る。替え刃の裏側に付着したパラフィンも丁寧を拭き取る。試料の位置を後退させた後、丁寧に本切り状態で面出しを行なう。取り外し替え刃を取り外し掃除する。替え刃の固定位置を移動、必要に応じ交換する。
  4. シワシワになる→→→静電気防止のため息を吹きかけながら伸展速度に合わせて筆でリボン持ち上げ、切れスピードにあわせて手前に移動させる。抵抗を軽減する。

 

<図表一覧と対応パネルボタン>

 


<目次と移動ボタンの対応>
<パラフィン切片HE染色標本の作製法>
 A. 組織標本作製技法の概要と安全対策
 B. 一覧表:組織標本作製工程
 C. 主な試薬と備品、その調製法
 D. 実技手順1(固定):前処理・固定/脱灰・整形(1st Stage)
 E. 実技手順2(包埋):脱水・パラフィン浸透・包埋(2nd Stage)
 F. 実技手順3(薄切):ミクロトーム操作、薄切・伸展/接着(3rd )
 G. 実技手順4(染色):染色、脱水、封入(4th Stage)
 H. 代用キシレン法
 I. 主な関連解説と参考書一覧


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F. 実技手順3(薄切):ミクロトーム操作、薄切・接着>
ふぃg


現在の
Fig No.


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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