魚類の解剖実験(ニジマス、テラピア、コイ、ウナギなど)、その授業や研修をたくさん担当した。大学生が主であるが中高生向けもそれなりの数、教員対象の研修会も少なくない。その時々に用いた様式や模式図をまとめたのが本編である。ところで、最初の模式図(Fig.0)に次のようなことを書いた。
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解剖とは・解剖では:話し合って下さい!
というセンテンスと、
1)どこを切るのか、2)どのように切るのか、3)どこを見るのか、4)どのようにして見るのか、5)何を見るのか、6)何のために見るのか、7)何の役にたつのか、8)解剖手袋はなぜ使うのか?、という箇条書き。
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そもそも、生物教育における解剖実験は、医学部解剖の目的とは異なるが、解剖学的さらに生物教育の観点からも「ヒトとサカナは何が同じでどう違う?」という視点は必要であろう。
また、対象について「なに・なぜ・どうして・どのようにして・それ本当?」のようなことをあえて考えることは教育的に必要であり、つまり、命題・原理・実証の必要性であるが、これらは全て「学びの基本」に関わる事なので、小難しく考えるより手っ取り早く「なるほどね!」という経験値があればそれで良しということにもなる。
それで、解剖実験を実際に体験することが大切か否かは今現在も大きな課題である。しかし、コスパ優先の人新生の時代に中高生対象の解剖実験はどうあるべきかという議論はすなわち棚上げに落ち着くのではないだろうか。ことほど左様に、手っ取り早く「煮干しで解剖実験のつもり」ということもそれで良しとなる(知識確認実験もそれなりに有効かもしれない)。
しかし、読解力の欠如や立体配置の理解が苦手など思わぬ危機的状況が学習の場の課題になっている。それを思うとやはり「臨場感に溢れた自然物を実体験として学習対象とすることは不可欠」ではないだろうか。
つまり、空間認識の必要性であり、構造(要素の配置とその繋がり、要素間の繋がりは役割の起点)を実体験することは誰にも必要な経験値であろうと考えている。学習の場には、構造(構図・公式、構成・構文・化学式など)という概念と枠組みが不可欠、その実体験として解剖実験も有効と思っている。
それで「愛でて・食して・釣って良し」のお魚は何かと都合が良い。ネズミ/カエルに抵抗を感じるのは人の常?であるが、サカナなら食材感覚であり、入手も容易で自宅でも解剖実験は可能。ついでに「魚」を通じて水生物環境保全(森川海連環)などを考えるなど、良いこと尽くめ。集団学習/知識確認式の場では不足しがちな「自律的な予習復習に加え発展的自主学習」も可能であると思っている(「構造」理解のはじめの一歩として有効である)。
つまり、おサカナの解剖実験や並列的に扱える骨パズル実験は人に必要な構造空間認識と読解力の育成を強力に且つお手軽に支援する数少ない教育教材であると考えている。いかがでしょうか。
前後したが、上記の箇条書きについて言えば、1)について言えば「観察したい領域を包む体壁で薄く柔らかいところを切る:その時、観察対象の内臓などを傷つけないように注意して切る」になる。つまり、どこから切っても良いけど、切りやすく傷つけないことに注意して切る、といことで、教科書が教えるところは本編記述のように「肛門の少し前方の部位を切る」ということになるが、腹側正中に肋骨がない魚の場合は「腹ビレの少し前から後方に体壁を切る」という方法も正しい。つまり、上記箇条書きは古典的ロジックに関わることを記したものであり、古典的/クラシックとは「知っててお徳な多くが認める基本的なことや考え方:知らないと損するよ!」なので、それが学習の前提課題(命題)なのかもしれないと思っている(教科書的には触れがたい事項だからこそ教師は余人に代え難い重要な任を担っていると思っている)。
それで重複するが、学習に不可欠な「命題・原理・実証の必要性」のことは魚類解剖実験を通じても実感できるという話にもなる。学校の先生にもそのことを仕事の一部にしてほしいと考えているが、忙しすぎて無理もある今この頃。それで、学習者や保護者は偏差値・知識確認学習だけでなく自主的に自主学習として「サケ/ニジマスやマダイなどを用いた解剖実験に加えて食育・知育・魚類骨パズルなども気が向けば試してほしい」と思っている。
なお、魚類解剖が「分かる・理解する・納得する」とそれらは自然と「階層性や動物生理の基本」にも繋がり、その理解は「細胞生物学や分子生物学に不可欠な前提」であることは「考察の自己相似性」から当然なので、学習レベルが高い就学者にはぜひ取り組んでほしいと思う身近な課題である。平和に疲弊する美しい日本にはしたくないと考え書き記した次第である。
なお、生物学習に関わる主な模式図や概念図を参照の時はココをタップで移動/参照。魚類骨パズルのはじめの一歩はココをタップです。
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以上で本編は終わり。
読んでくれていたら「本当にありがとう!」。
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