<はじめに>
体の成り立ち/体構造は複雑であるが、
- 実体あるものには「構造」がある。
- 構造とは「その要素の配置と繋がり」、
- 複雑な場合は「階層性/階層構造」、所謂「ツリー構造」を導入する。
- その要素は「形態と機能(形と役割)」から考える。
- 形態とは「役割を示す形」であり、
- 機能は「物性(性質)依存」である。
- よって、実体/形態に関わる模式図は「概念図」と考え「プロセス」から取り扱う(段階的/経時的に考える)。
- 学習は平等に「時間と肉体労働」を要求する:自主的な疑問の再確認は大切。
- 「その他」も重要であり「共有命題」が必要である。
<形、役割、仕組みと由来、その他>
:部位・形状・名称・繋がり・区分
・役割・仕組み・由来・その他
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(画像をクリック: 左 Fig0、中 Fig00、右 Fig000) |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<前書き>
このテキストは「脊椎動物の体構造の見方・考え方・進め方」であり、その説明には「階層性/構造」という概念が不可欠である。階層性には納得するが考えると混乱してくるのであまり考えないと言った声が聞こえてくるが、それでも重要なことには違いは無い。それで「視座:視点一覧(考えても良い事)」をこのテキストの上部に表形式で設定した。その主目的は階層性(下記#1を参照)に関わる「隙間」をなんとか埋めることである。
上記「表-左列」には通常用いられる階層区分に加え、それらの連続性をより明瞭に補足する幾つかの新たな視点を加えた(挿入した)。「表-右欄」はそれら視点が意図する考え方や要素であり、表記ではその概要・概略的な観点を示した。それでその詳細は、表の各視点に付した[数字ボタン]により移動し、本テキストの後半に記した「補足解説の部」にて参照する形式とした。
*補足1:関連サイトについて
下述する各視点の「補足解説の部」には関連する「実践サイト」も付記されているが、それらの多くは本Webテキストの大区分「描き・見て・考える」の項目でもある。それらは「Top Page」に示した文字列をクリックして移動・参照する。あるいは下記の文字列を利用する。
なお、この「視座:視点一覧」を連続講義の一部とする場合は、別サイトの「生物系のロジカルシンキングトレーニング」あるいは「実験講義2」がその事例である。
「描き見て考える」、「実験講義2」
「生物系のロジカルシンキングトレーニング」、
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補足2:一般的な体構造の階層レベルは下記(1〜8)である。本編ではそれらを考えるため、本頁の上部に設定した「視点1〜視点16」に沿って長々と解説する。恐縮してしまう。それで下記のような「命題・課題」を付記し要点をイメージ化する(詳細は本文、また「別表」を参照)。
注意:ボタン[ON]からリンク先/別シートへ移動し、要点のみを確認するも効率的かもしれない。
- - 1)個体 -2) 器官系 -3) 器官 -4) 組織
- 5)細胞 - 6)細胞小器官- 7)巨大分子
- 8)分子 - 9)元素 - -
<1. 個体>
共有命題「サカナの縦縞・四肢・尻尾」を話し合う ・・・・
*その課題「科学論・多様性と共通性・体の座標」を考える。
<2. 器官系>
共有命題「ネコの前にサカナを置いたらどうなるか」を話し合う。 ・・・
*その課題「器官系区分と動物生理の基本」を考える。
<3. 器官>
共有命題「体の中身の描き方:描いた線や形とは何?」を話し合う。 ・・・
*その課題「体構造の側面俯瞰図と主要器官」を考える。
<4. 組織>
共有命題「体の薄切り2色で染めたらどうなるか」を話し合う。 ・・・
*その課題「4大組織:上皮・結合・神経・筋」を考える。
<5. 細胞>
共有命題「細胞をシャーレに入れたらどうなるか」を話し合う。 ・・・
*その課題「多様な細胞とその原型・細胞くんの描き方」を考える。
<6. 細胞内小器官>
共有命題「細胞自身は何をしている」を話し合う。 ・・
*その課題「考える筋道・古典的ロジックの展開」を考える。
<7. 巨大分子>
共有命題「筋肉は何からできている」を話し合う。
*その課題「生体高分子とは?:種類・形・役割・仕組み・由来」を考える。
<8. 分子>
共有命題「子牛が草を食べるとなぜ成長するか」を話し合う。
*その課題「生体分子とは?:種類・形・役割・仕組み・由来」を考える。
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視点1:階層性/構造区分
に関わるイメージ図と補足解説
- 個体 - 器官系 - 器官 - 組織 - 細胞
- 小器官 - 巨大分子 - 分子 - 元素 -
(実践サイトは上記の表、または実験講義2の序論)
(画像をクリック: 左 Fig1 中 Fig2 右 Fig3 ) |
<補足解説#1:階層性>
表記した「視座:視点一覧」は、『体制(脊椎動物)の階層構造に対する基本的 な「視座」:考えても良いこと』であり、その視点としてはじめにこの#1「階層性/構造」を設定した。言うに及ばずの下記8項目(8レベル)とその連続性である。
1.個体 - 2.器官系 - 3.器官 - 4.組織 - 5.細胞
- 6.細胞小器官 - 7.巨大分子 - 8.分子- -
動物体(個体)はその構造から、個体-器官系-器官-組織-細胞-細胞小器官-巨大分子-分子-、という「段階的区分/構造レベル」に分けられる。その基準は、便宜上、区分が可能な形態の「サイズ/大きさ」に根拠を置く。つまり、各レベルは直下位レベルに属する種々の要素(とその派生物)からなる合目的的な集合体(構造体)である。よって「機能単位」としての役割を担う。その全体像は、縦に階層区分、横にその要素を配置すると、個体を頂点とした線分ピラミッドとして理解する事ができる(いわゆる「ツリー構造」の扱いである)。但し、体の基本単位は「細胞」であり、体は「細胞と細胞間物質」から構成され、その全ては細胞から生じる、という大前提は常に念頭とすべき概念である。
補足:「構造」とはその要素の配置と繋がり、「形態」とは役割を示す形、を意味する。
生物教育実践の場における「階層性 ヒエラルキー」という用語の取り扱いは、幾分、棚上げのような気もする。至極当たり前・簡単明瞭?なためか積極的な解説はあまり見当たらない。「種」のような区分も対象とすると意見の相違も生じることからとりあえず軽く済ませるということかもしれない。ともあれ、動物体の構造を思案する時、誰もが無視できない概念(考え方)であることに間違いはない。
階層性ではなく「動物体の階層構造」と限定すれば少しは使いやすいかもしれない。階層というニュアンスが不適切なら「動物体の連続的な構造性」でもかまわないと思う。なお、簡単明瞭でも少し考えると「実感」できないということもあるが、それはきっと何かと難しい事象と考えてもよい。いずれにしても「階層性」という概念は体構造の理解には不可欠である。
上述解説を読んで「了解・納得」と言ってくれることを期待したいが、期待ははずれるもので、その理由は「段階区分は良しとするが連続性を考えるとどこか腑に落ちない」というところだと思う。縦軸は理念概念の区分で、横軸の要素は実体として区分可能な固有名の羅列と映れば、確かに「言われて困る教師の立場」である。つまり、縦軸を成す階層区分に対するイチャモンというより、実体として理解する各要素が横軸に羅列的に並列することに我慢がならない、ということであるらしい。同レベルに区分される要素ならそれらに一貫した論理(考え方)があれば良いのに、というところがネックとなっているというのが実情ではないだろうか。
階層性とは基本的な概念であり重要であるが、考える人にとってはその連続性や論理性が気になるため、重要であっても何となく取り立てて深入りしたいとは思わない、というのが実情である。つまり「多様性と共通性」の課題であり、「実体と概念の連立」を補完する何かがが必要である。それでこの「視座:視点一覧」を設定してみた。
補足:階層性は生物学の重要な考え方であるが、上記を読んでも面倒くさいという思いはきっと付きまとう。それでアドバイス。
生物の話を簡単な枠組みに置くと「形・役割・仕組み・由来・他」である。専門的には「解剖組織学・生理生化学・発生遺伝学」と「細胞生物学」の対象であるが、「形・役割・仕組み・由来」では大雑把すぎるので、更に平易な表現で区分すれば「部位・形状・名称・繋がり・区分(構成)・役割・仕組み(物性)・由来・その他」の9つの話し合い項目となる。それで、階層区分を表形式で配置して、縦欄に上記9項目をセットすると具体的な話し合い項目、あるいは「疑問の確認」が容易になると思う。つまり、なに・なぜ・どうして・どのようにして・それ本当?、という主体性が生じると思う。
何れにしても生物は複雑系であり、生物個体の成り立ちの理解には終わりは無い。それが現実であり、それでも自発的な疑問は論理的に追い求めるしかない、正確な答えは見つけ難いが、それでも考える筋道はきっとある、ということは悪いことではないと思う。表の下部Bに記した「現実実体の枠組み」がその一助になると思う。
** 動物体の見方考え方 **
体の基本単位は細胞であり、体は受精卵という1細胞を起源とする。細胞分裂(分裂増殖)を繰り返し、発生過程で3胚葉として概念化された細胞集団は、形態的に4大組織からなる器官を形成し、運動や代謝などの役割を担う。その系統(器官系)は例えば11区分とされる。総じて、体は細胞と細胞間物質から構成され、全ての細胞や細胞間物質は細胞から生じる。一般的に、体はその形態的な構成区分から「個体・器官系・器官・組織・細胞・細胞小器官・生体分子」という階層性(階層構造)で認知される。生物とは「形」あるものであり、その「形(形態)」は常に物質代謝を行なう事により維持される。
(上記の生物学用語に関連した模式図/画像を「生物資料集」などを参照し探してみよう) |
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視点2:個体/最大単位
に関わるイメージ図と補足解説
<体の成り立ち・多様な形態・統合的な見方>
(ex.下記一覧、骨格系、系統発生)
(実践サイトは「A.動物体の原型」)
(画像をクリック: 左 Fig4 中 Fig5 右 Fig6 ) |
<補足解説#2:個体>
「個体」について「考えても良い事・思い出してほしいこと」を述べれば切りがない。多種多様で取り留めがなくなるが、本節は「体構造/階層性」としての視点「個体」であるので「最大単位」であり、疑問の余地はない。しかし気になるのは「多様な姿・形・形態であっても脊椎動物として画一的に扱われるのはなぜ?」と言うことではないだろうか。
背骨があるから同じグループ:This is a pen. のような説明に満足する受講者は少ない。背骨があっても様々な姿・形をどう見るか考えるかを教えてほしい、というところである。
サカナもヒトも同じだよと考える人は一般にはいないが、生物学の教えるところはその理を説明する。つまり、系統発生・系統解剖学的な視点であり、例えば「相似・相同」という概念を置く。つまり、学習者が「個体」ということを考える時(視点を持つ時)に必要な概念(考え方)とは「体の成り立ち・多様な形態・統合的な見方:多様性と共通性」であるが、これは「意識して下さい/念頭に置いて下さい」という「心構え」である。
上記では意味をなさない・心構えを習うほど暇ではない、と云われそうなので、その場合は「背骨に関わる動物のことなので骨格系を考えて下さい」と云いたいが同様に無理もある。それでそのために必要なことは、階層区分「個体」という視点には「1次体区分・2次体区分」という関連した視点を学ばなければならない、である。それで、本表では#2「個体」の下位には「#3、#4」としてそれらの視点を挿入した(設定した)。
補足:姿形の違いは、もちろん棲息環境にも配慮する必要があるが、一義的には確かに骨格系の課題である。サカナの骨格はヒト骨格とあまりに違いすぎるように見えるが「骨パズル」などを通じて意識すると、確かに似ているなと感じることもできるはず。経験値も確かに必要である。骨パズルもご参照ください。
・魚類骨格系の話は「ココ」をクリック・
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視点3:1次体型区分
に関わるイメージ図と補足解説
1)体部位、2)体軸、
3)体断面、4)体内腔、5)体節分節
(実践サイトは、描き見て考える:A1.体部・体軸・体断面)
(画像をクリック: 左 Fig7 中 Fig8 右 Fig9 ) |
・・・・・・・・・・・・・
<補足解説#3:1次体区分>
上記、#2「個体」に付帯する視点としてここに「1次体区分/体型区分」を設定した。「1)体部位、2)体軸、3)体断面」加えて「4)体内腔、5)体節分節」といった要素を思い出してほしいである。その例題(導入命題)は「サカナの縦縞・四肢・尻尾」である。その詳細は、「描き見て考える」の実践サイト「A.動物体の原型」の文字列から移動し、更に「1.体の座標「体軸・体部位・体断面」をクリックして参照してほしい(上記小画面の上の文字列)。
概説すれば、多様な形態を示す脊椎動物であるが、その姿・形を見る共通した視点には「1次体区分」があり、どんな動物でも「頭部・胴部・尾部」があり、更に、それらに従った「体軸」の設定が可能であるということである。更に、体の中身も気になるので体の断面を設定する場合にも取り決め用語があるということである。それで「シマウマの縞は縦縞か横縞か」などと一般には考えなくても良いことをわざわざ考えてみてほしいと思っている。 詳細は実践サイトを参照(上記文字列から)。
なお、脊椎動物の体内には幾つかの空所(体腔)があり、また体の作りは頭尾軸に沿った「体節」構造に従うということもイメージすると何かと都合が良いが、体腔についてはサイト「描き・見て・考える」の「C. 体の体腔管腔その壁面」で取り上げるので、ここでは省略気味である。
いずれにしても学習者が動物体を見て考える視点の始まりは、無意識であれ、どこが頭でどちらが背中ということなので、あえて1次体区分とした。その基軸は背骨の方向性でもありこれは体節そのものでもある。ヒトもミミズも同じだよでは飛躍しすぎるので本視点の補足解説はここまでとする。
<先頭行へ移動 Table Topへ ・関連サイト:BioMTXへ>
視点4:2次体型区分
に関わるイメージ図と補足解説**
<A. 体性系 (体壁性器官):背側>
<B. 臓性系 (内臓性器官):腹側>
<C: 7)調整、8)境界/保護>
(実践サイトはB.器官系11区分)
(画像をクリック: 左 Fig10 中 Fig11 右 Fig12 ) |
<補足解説#4:2次体区分>
動物体を「見る考える視点」には部位や軸だけでなく「中身」もある。器官臓器その系統(器官系)のことであるが、これをどのように説明するか、あるいはどのような経緯から取り扱うかはその場その時その課題であり、少なからず悩みの種である。知る程は様々であるので、それでその導入として取り上げる視点がこの「2次体型区分」である。
つまり、動物体の中身を概念化するとFig 11のような側面俯瞰図とすることができるが、その特徴から体の中身の配置は「背側と腹側」という極性から成り立っているということを意識してほしい、である。その境界は背骨の直下と考える。
なお、背側・腹側、つまり、下述する臓性系(内臓性器官)と体性系(体壁性器官)の理解には上記の1次体型区分による「体の横断面」が適しているが、体の側面俯瞰図(Fig11)との併用は相乗効果をもたらすと考えている(立体的なイメージへ繋がる)。
ところで、体の中身といえば消化器系などの内臓などを思い出すが、それらを概略的に扱うと腹側に位置し、背側には内臓とは思えない「感覚器、脳脊髄、筋肉・骨格系」の多くが位置するという話である。内臓等は体腔内にあるがそれ以外は何となく体の壁(体壁:つまり体側筋など)の中に詰まった状態であることから、それらは体壁性器官と呼び、あるいは「体性系」と言い表す。腹側は内臓性器官なので「臓性系」である。ヒトの頭部を思い出すと混乱するが「腹這いになって口を前に突き出す」という姿勢をイメージすると納得できると思う。つまりサカナの側面図である。
*補足:体性系と臓性系とは解剖学用語であり、動物を解剖する時、内臓など臓性系の諸器官は「体壁:皮膚とその下の体側筋」を切り開き体腔内に所在するもので、感覚器・脳神経・筋骨格は解剖のとき「体壁」の中に埋もれているという状況から体性系(体壁性器官)として取り扱う。
<先頭行へ移動 Table Topへ ・関連サイト:BioMTXへ>
視点5:動物生理の基本(器官系の役割)
に関わるイメージ図と補足解説**
: ネコの前にサカナを置いたらどうなるか?
・・・2系6要素+α:体性系と臓性系・・・
<A:1) 受容 → 2) 伝達 → 3) 実施>
<B:4) 吸収 → 5) 運搬 → 6) 排出>
<C:7) 内部調整、8) 境界/保護>
(実践サイトは B.器官系11区分」)
<補足解説#5:動物生理の基本>
上記に従い「体部位・体軸・体内腔・背腹側」というイメージは「構造」つまり「その要素の配置とつながり」の枠組みである。よって、器官系や器官の話し合いの前提として必要であるが、それでも器官系11区分の名称を羅列的に扱うことは回避したいと思うのは学習担当者の本音である。また、動物体は「生きている構造体」であり、構造図があっても「生きている」のイメージを無視して考察することは「動かないロボット」を考えているようなものである。
これに対して学理体系(理性的に話し合いを進める基準)は丁寧にその視点を与えている。つまり、下記の#6.器官系(器官系統)とは、動物が生きるに必要な構造の基本要素であり、それら要素とは「動物生理の基本」的な考え方であり、大まかに区分配置すると「受容→伝達→実施」と「吸収→運搬→排出」という2区分・計6要素の役割とその連続性から成り立っている(生きている)という考え方である。繰り返しとなるが、つまり「動物生理の基本」である。
前者「受容→伝達→実施」は体性系の器官から構成され「背側」に位置し、後者「吸収→運搬→排出」は臓性系の器官で「腹側」に配置されるという簡単明瞭な説明である。体性系と臓性系で2系、上記の6区分で6要素、それで「動物生理の基本:2系6要素」となる。但し、排泄と排出を間違えてはいけない。 器官系11区分の解説の前あるいはその導入としてこの視点は不可欠である。
*補足:科学は物事を明解に説明する。例えば「ネコの前にサカナを置いたらどうなるか」と言う設定(動物生理の基本)は、よって、上記の観点(2系6要素)であり、具体的な用語として器官系名称や器官名を用いながら説明するとその事例が成り立つ。その詳細には次の視点「器官系」の理解が必要となる。
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視点6:器官系
に関わるイメージ図と補足解説
(器官系11区分と順列配置)
<A: 1) 感覚系、2) 神経系、3) 筋系、4) 骨格系>
<B: 5) 消化系、6) 呼吸系、7) 循環系、8) 泌尿系、9) 生殖系>
< C: 10) 内分泌系、11) 外皮系 >
(実践サイトはB.器官系11区分」)
(画像をクリック: 左 Fig16 中 Fig17 右 Fig18 ) |
・・・・・・・・・
<補足解説#6:器官系>
上記「1次体区分、2次体区分、動物生理の基本」の理解が進めば、というよりそれなりに納得すれば、生きている動物体の成り立ちを考える準備/枠組みが整う(座標軸となる)。一般的には羅列的に扱いがちな器官系の名称にもその論理を与えることができる(話し合いの筋道が見えてくる)。つまり、階層性区分で扱う「器官系」とは「あるからある」という取扱いではない。生きるに必要な要素であり、そこにはその理があるから成り立っているという考え方である。2系6要素-器官系11区分とその順列配置の取扱いである。
それで、器官系区分は10あるいは11区分であり、1) 感覚系、2) 神経系、3) 筋系、4) 骨格系、5) 消化系、6) 呼吸系、7) 循環系、8) 泌尿系、9) 生殖系、10) 内分泌系、11) 外皮系、となる。それぞれの名称を思い出す時は上記の2系6要素から考える。暗記ものではない。それぞれは上記2系6要素の観点から例えば上記のような連続性に基づき表記されるが、それでも時に戸惑いも生じるときは「配置図」として、例えばFig18のような取扱いにすると都合が良い。生物の話は一義一元的な取扱いには馴染まないがそれでも配置図(概念図)にすればなぜか親しみが湧いてくる。「構造」の取扱いである。
なお、器官系11区分とその順列は、言わば恣意的であり何となく違和感を感じるという人も多いと思うが、それでもそれなりに役に立つという経験があれば考え方も変わると思う。例えば、そのためには「#14:細胞生理機能の基本」を参照してほしい。
補足:泌尿系と生殖系を一緒に取り扱う場合は「泌尿生殖系」であるが、「排出系」として10区分となることも多い。上記順列の「外皮」を一番目とする方が自然な気もする。内分泌系とは一途に他の諸器官のためのみ働く器官で「内部調整」を担う。動的平衡に不可欠である。
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視点7:器官(機能単位)
に関わるイメージ図と補足解説**
<主要器官の理解:多様性と統一性>
器官とは形態的に周囲と区分され独自の機能を示す組織集合体であり、その視点は「形・役割・仕組み・由来」であり、具体的には
部位・形状・名称・繋がり・区分・役割・仕組・由来・
実践サイトは
A3. 管状構図に基づく体の中身の描き方、
B2. シリトリウオ、
(画像をクリック: 左 Fig19 中 Fig20 右 Fig21 ) |
<補足解説#7:器官>
個体は「生きている」を意識するとその主要な機能単位は「器官」であり、器官・臓器の摘出はその多くが致命的な状況をもたらす。よって、どれもこれも重要である。
上記#6の「器官系」は通常その構成要素「器官や臓器」と一緒の取り扱いであり、よって「器官系区分に基づきその主要部位(器官)とその繋がりを考えてみよう」ということが「器官」という視点に与えられた課題となる。「器官名を記し線分でその繋がりを表してみよう」という問いが必要か否かは状況次第であるが、「主要な器官は確認しておこう」ということは重要である。しかし、何を確認するのか、これでは意味不明である。
つまり、主要「器官」の取扱いの主課題はその「生理機能」であり、通常は「各論」の扱いとなる。よって「その考え方の基本:総論」が難しくなるが、例えばその学習を意識するなら、その生理的な役割を考えながら「体の中身の描き方:環状構造に基づく体の中身(Fig20)」が妥当では思う。体の基本構造(要素の配置と繋がり)を描いてみよう、である(上記の文字列で実践サイトを参照)。そのための座標軸は既に記した。
補足1:機能単位と記したが体構造に関わる「単位」の取扱いは結構紛らわしいが、何れにしても体にはいろいろな見方(形・役割・仕組み・由来など)があるのでどのような計測モードを用いるかで異なってくる。補足2:「臓器」は多くが体腔内にあるもので、体性系(体壁性器官)の骨や筋肉、また埋没した主要な血管等は「器官」と言い表す。
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視点8:体腔管腔その壁面(形の連続性)
に関わるイメージ図と補足解説
体管腔は基本3種(腸管導管、体腔、血管)
その内壁は「上皮組織」と総称され、所在から「上皮・中皮・内皮」。
「管腔-上皮細胞/基底膜」の極性は、体内に「オモテ側/ウラ側」の基準を与え、視座を定める。
実践サイトは
:C.体腔管腔その壁面、C2.体の横断面,
E1.上皮組織
魚類組織のバーチャル顕微鏡観察
(画像をクリック:左 Fig22 中 Fig23 右 Fig24 ) |
<補足解説#8:体腔管腔その壁面>
はじめにひとこと。この視点「体腔管腔その壁面」とは、例えば腹腔や消化管や血管などの内部(体腔や管腔)、言わば何も無いところが話題であるが、それらは境界により空所となる。その境界が管腔の壁面である。よって、この下記は「何も無いところが重要」という話である。 なお、血液など液体に満ちた管や消化物などが残る腔でもあるが、ここではとりあえず「腔所/空所」として取り扱う。切開すると内容物を容易に取り除くことができるところが「腔」である。
各器官や臓器は他との繋がりがあるもののその多くは独立した形状として意識することができる。心臓はこんな形で肝臓はこの形状、である。器官は「組織」の集合体であり器官と組織は不可分の関係にあるが、この「視座:視点一覧」ではその器官と組織の間にこの#8「体腔管腔その壁面」という視点を与えた。その理由は下記である。
そもそも我々が認知する体形や体内の形、つまり器官などの形とは立体的な物体の表面、模式図など平面的な場合では形状の外形(境界/線)である。つまり体内には腹腔などの体腔、消化管や血管などの管腔などがあり、体内構造を簡略に捉えればそれら「何も無いところに接する物体の形状」と言い表すことができる。
例えば、腹腔内には消化管や肝臓などがあり、それら器官の表面(境界線)を描くと器官などの形として扱うことが可能となる。ちなみに、肝臓などの実質器官の中にも管腔が沢山ある。毛細血管や毛細胆管であるが、それらチューブ状の空間の壁面(血液や胆汁の流路)を丁寧に描き、空所でないところは細胞配列体とするとその構造の基本が現れる(無理があるが、細胞を描くではなく何も無いところを描くという視点である)。なお、主要な血管などのチューブ状の器官は「中空器官」と言い表す。
よって、体の形状、例えば上記(視点7)で紹介した「体の中身の描き方」の「描いた線とは何?」という課題が生じる。答えは上皮組織、簡単に云えば細胞シートであり、細胞が切れ目無く連なり外形を表す、である。何も無いところに接する体構造の表面(壁面)は、体の基本単位「細胞」が隙間無く連なったシート構造である、という顕微鏡による組織標本の観察結果となる。それを上皮組織(オモテ側の細胞層)として言い表すが、「組織」という視点の前、「器官」という視点の後にはこの「体腔管腔その壁面」という視点を加えておくと体内構造の理解が容易になるはず。実践的には「バーチャル顕微鏡による魚類組織の観察」も対応するので確かめてみよう:「ココ」をクリックする(実体と概念の連立である)。
ちなみに、体の主要な形状(体腔管腔の壁面)をなす細胞層(上皮組織)と後述するその足場「基底膜」を基準にすると「オモテ側、ウラ側」という体内構造に対する明瞭な基準が生じる。それで、体の主要な形状(体腔管腔の壁面)をなす細胞層(上皮組織)のウラ側には何がある?という疑問が「組織」という概念を生む。つまり、ウラ側には結合組織や筋組織、神経組織がある、ということである。ウラを知らなきゃ事実はみえない、である。
*補足:体腔管腔その壁面とは、つまり体には3種類の腔所に面した壁があるということである。管腔内が外界から繋がっているところは「上皮」、体腔のように体内のドーム状の空所、つまり外からは切開しないと入れないところの壁は「中皮」、外から入れない体内に埋没した血管のようなチューブ状の壁は「内皮」である。上記3種類とも上皮組織であるが、その所在からそれらの細胞は中皮細胞、内皮細胞とも呼ばれる。中皮はまた漿膜とか腸間膜などとも言い表す。興味深い人にはいろいろなあだ名があるのと同類である。よって用語の質問は「なに・なぜ・どうして・どのようにして」である。
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視点9:組織 (構造単位)
に関わるイメージ図と補足解説
体の薄切り2色で染めたらどう見える?
<4大組織>
1)上皮、2)結合、3)神経、4)筋
特定の細胞と細胞間物質の集合体
各領域は基底膜で分別される
実践サイトは「E1.上皮組織, F1.4大組織と由来」、または、組織学自主トレ、マクロ組織の話し合い
(画像をクリック:左 Fig25 中 Fig26 右 Fig27 ) |
<補足解説#9:組織>
組織のことをティッシュと言う。ティッシュペーパーのティッシュであり、「薄くて織り込まれたもの」である。組織学はヒストロジーであり、歴史のヒストリーとは同じ語源らしく歴史は「文字で綴られたもの」である。
「体の薄切り2色で染めるとどうなるか?」という質問をいつもしているが、普通に考えれば混色で一様に染め上がるであるが、動物体の組織標本(ヘマトキシリン・エオシン染色標本:上記#8に付記した魚類組織バーチャル顕微鏡観察像)の場合は、青っぽい色と赤っぽい色とで形状が染められる。その染色状況から識別できる様態が体内の組織である。
体構造の「組織」という視点に関わる要素は、上記の「2色でどうなるか?:染色原理とその特徴」に基づく組織区分であり、つまり「上皮組織、結合組織、神経組織、筋組織」の4大組織(4 basic tissue)であり、組織の基本区分である。
上皮組織の経緯は、既に上記#8に記した「体腔管腔その壁面」であり「何も無いところに面する壁面」つまり「切れ目無く連なる細胞層」である。その他の組織区分を概説すると組織学になるので省略したいが、上皮組織(オモテに面する細胞層)のウラ側には何がある?という観点がその他の組織区分の始まりである。
ウラ側/内側にあるのは、脳神経、筋骨格などであり、神経組織、筋組織は誰でも容易に納得する区分で、その残りが「結合組織」である。では、骨・軟骨はどうなるのとなるが、これは結合組織に分類区分される。本邦の多くの専門書の4大組織区分は結合組織ではなく「支持組織」という用語が用いられ、骨をイメージするので都合が良いが、外国の教科書では「支持組織」の扱いはほとんどない。骨が無くてもタコイカも生きているという観点である。それで「結合組織」である。
ちなみに骨(硬骨)からその成分カルシウムを薬品処理で取り除いても骨の形は変わらない。残った成分はコラーゲンであり、結合組織の代表成分(線維性結合組織)である。但し、結合組織には血球などに加え肥満細胞、脂肪細胞なども含まれ混乱する。それで結合組織は「中胚葉に由来する上皮組織・筋組織以外のところ」と考える。中胚葉由来ならウラ側にあるはずという考え方である。よって、下記の#10「由来/起源」を考えることも「組織」には付随する。
*補足:結合組織も細胞と細胞間物質からできている。その概説すると、線維性成分線とその産生細胞、骨軟骨成分、血球系成分、脂肪成分、と肥満細胞である。加えて細網組織成分というのもある。コラーゲンなどの線維はそこに散在する線維芽細胞が生産する。詳細は「4大組織と由来(主に結合組織と中胚葉)」を参照、あるいは「組織学自主トレーニング」を参照してほしい。
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視点10:所在の根拠(構造の由来/起源 )
に関わるイメージ図と補足解説**
体は一粒の細胞からできてくる!?
受精卵→<1)外胚葉、2)内胚葉、3)中胚葉>
→咽頭胚 →組織構造体
発生段階での所在に基づく区分
シート構造の変化に基づく様式
実践サイトは
:F.4大組織と由来, G3.多様な形の細胞
(画像をクリック: 左 Fig28 中 Fig29 右 Fig30 ) |
・・・・・・・・・・・
<補足解説#10:所在の根拠>
体の階層構造、「組織」と「細胞」との間にギャップを感じる受講者は少なくない。あるいは「消化管は内胚葉由来」などという図説解説に戸惑うのも一因であろう。それで一部上記と重複するがこの視点#10(組織の由来)を設定した。
つまり、体には骨や革製品になる真皮のような細胞とは思えない部分も沢山あり、「細胞」が集まると「組織」、例えば結合組織、になると素直に納得する人はいない。また、発生学が教える胚葉性は、受精卵→胞胚→尾芽胚(3胚葉:外胚葉、内胚葉、中胚葉)→咽頭胚→幼体であり、直感的には「細胞-組織」のイメージが希薄なことも一因であろう。それで「組織-細胞」の間にはこの視点#10「由来/起源」が必要である。つまり「組織の由来:各組織が所在する根拠は発生初期に形成された3胚葉区分に依存する」である。
この視点には「体の基本単位は細胞であり、全ては細胞からできてくる、体は細胞と細胞間物質でできている」という大前提「細胞説」が必要であり、つまり「細胞間物質」の概念が不可欠となる。
補足すれば「細胞間物質」とはウラ側にある細胞と細胞の間を埋める細胞が生み出す物質であり、中胚葉に由来し、よって結合組織の区分になる。その主要な非細胞性の成分がコラーゲンやエラスチンなどの構造性線維である。
腔所/オモテに面する薄くて脆弱な上皮組織(細胞シート)はフェルト状のコラーゲン線維により裏打ちされその構造が維持され、骨はコラーゲン線維にカルシウムが結晶化した構造体である。コラーゲン線維の間には線維を生み出す線維芽細胞が散在すると考える。
ところで、体構造の大前提が「細胞と細胞間物質」では大雑把すぎるので、発生学の教えるところは、発生初期の体区分「胚葉性:外胚葉、内胚葉、中胚葉」を用いて体組織の起源を説明する。つまり、「外・内・中」という方向/所在を表す言葉の意味そのものである。
ことの始まりにひと粒の細胞が細胞分裂を繰り返し、胞状の細胞シート(外胚葉)となり、そのシートが内側に陥没・伸長(原腸陥入)した管状の細胞シート「内胚葉」が形成され、同時に、それらの細胞シートからウラ側(内側)に脱シート化し遊走・散在した細胞が「中胚葉」の始まりである。なお、神経管は胞胚外胚葉が溝のように陥没し管状に細胞シートが閉じた構造であり、よってその構造は「神経上皮」とも呼ばれる。
例えば、胃・腸などの消化管は上皮・結合・神経・筋の4大組織の集合体である。消化管内腔に面する壁「上皮(細胞シート)」は内胚葉由来。体内の中間につまり埋没したドーム状の空所「体腔」に面する上皮(中皮:漿膜)はよって中胚葉性。この2枚の上皮に挟まれた内側(ウラ側)には中胚葉性の結合組織と筋組織があり、また内側には神経組織もあるが、これは外胚葉性の神経管や神経堤細胞を経由して体の内側に伸長し内在するため、外胚葉由来の組織である。
更につまり、この視点で一番気になるのは「中胚葉由来の細胞や物質には何がある?」である。混乱してくると思うのでこれらについては実践サイトを参照してほしい。
<体の中身・描いた線は何・そのウラ側には何がある?>
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視点11:細胞の基本的性質
(検証考察の対象)
に関わるイメージ図と補足解説*
細胞をシャーレに入れたらどうなるか?
細胞の基本的性質は「足場依存性」であり「細胞シートの形成」と考える。
発生過程は、細胞シート→(脱シート化→移動→再シート化)→分化
(実践サイトは D.細胞の基本的性質)
または「実験講義2の考察3」
(画像をクリック: 左 Fig31 中 Fig32 右 Fig33 ) |
<補足解説#11:細胞の基本的性質>
本テキストでは、脊椎動物(脊索動物門)、つまり、多細胞動物の体の成り立ちを念頭にその階層性についてコメントしている。その体の基本単位は下記#12の「細胞」であるが、その前にその基本的性質ということを取り上げる(考えたい)。
上記の各視点で取り上げた「体構造の考え方」で特に重要な事としたいことは、#8「体腔管腔その壁面」である。つまり、体の形とは「管腔などの空所に面した細胞が平面的に配列し切れ目の無い細胞シートが成す形状である」ということ。また、そのシートを基準とすると体内構造に「オモテ側・ウラ側」という客観的な体内基準(方向性)の設定が可能であり、脆弱な細胞シートはウラ側の結合組織(線維性結合組織)により裏打ちされその外形を表す、ということである。
つまり、体の細胞は多種多様であるが、血球系の細胞のようにその目的のため機能分化し、結果として体内を循環あるいは遊走している細胞もあるが、その他のほとんどの細胞(神経系や筋系も含む)は固定されて、あるいは細胞自身が自律的に物質に接着して生きている。この様態を細胞の「足場依存性」あるいは「接着依存性」と言う。それで、細胞の基本的性質は「足場依存性と細胞シートの形成」となる。なお、足場依存性が弱くなると体内の細胞は結果的に規則性・協調性が希薄になる。よって、勝手な振る舞いをはじめるため腫瘍やガンになる、と考えるとインパクトが出るので分かり易い。
そもそも例えばバラバラに単離した細胞を培養シャーレ・培養液の中に放置(つまり培養する)とどうなるか、と設問設定である。つまり「生きている細胞をシャーレに入れたらどうなるか?」という視点である。結果は培養容器の底面に自律的に接着して単層の細胞シートを形成する、である。なぜ、そのような規則性を示すのかであるが、同時に多くの細胞がそうならそれは「基本的な性質」である、となる。仮説演繹的な取り組みとなる。
それで培養細胞系であれ体構造であっても「隙間ができたらどうなるの?」となり、これは損傷治癒でもあり、細胞分裂の開始となる。その結果、隙間が埋まると「接触阻害」が生じて細胞周期のGoになる、続いて必要に応じて機能分化を開始する。接触阻害が生じない時は足場依存性が希薄な状態ということでガンになる、という経緯である。詳しくは「細胞内の情報伝達の仕組み:がん抑制遺伝子とは?」である。なお、よって、この視点の下位、「細胞」の上位には「細胞周期:細胞分裂・細胞分化」という視点の設定も可能となる。
足場依存性が生じるためには「接着基質」が必要である。基質 matrixとは「何かを生み出すところ」なので適切な物質(基質)があれば細胞はその基質を認識して接着して移動・配列する(更には機能分化する)。細胞接着基質の代表的な物質はコラーゲンであり、ウラ世界の結合組織の主役である。専門的には「細胞接着因子/細胞外マトリックス(ECM)」としていろいろな物質が上げられ、細胞増殖因子と並列の要素であるが、生体基質は「基底膜」として簡単に言い表す。基底膜とは細胞直下にあるコラーゲンなどからなる細胞の足場(接着基質)となる膜状の構造。
繰り返しとなるが、上記は「細胞培養技術」という観点から考えると分かり易い。つまり、技術開発とはつまるところその対象(この場合は細胞)の「物性理解」に基づき進められる。この場合は「細胞培養技術」なので「細胞の基本的な性質」を考えながら進めるである。多くの培養細胞は培養シャーレの底面に接着しないと生きていはいけない。つまり、接着基質が必要であり、よって「足場依存性」である。この観点から細菌と動物細胞の取扱い(培養技術)の違いが生じる。細菌(細胞)は動物細胞より随分小さいにもかかわらず、なぜ簡単に扱えるか?である。つまり、細菌は非足場依存性である。
ともかく、細胞にも「基本的な性質」というより「性質の基本とは?」と言う視点が必要である。つまり、その基本的性質は「足場依存性」であり「細胞シートの形成」と考える。その根拠は多細胞動物であり、また体は細胞と細胞間物質からできている、一粒の細胞からできてくる、にある。体は結果的に発生過程において、細胞シート→(脱シート化→移動→再シート化)→分化、という基本的な経過を経る。
ところで、細胞の基本的性質のことを考え始めると「細胞の構造(細胞構造の基本)」ということが気になってくるものである。それで、この視点の下位にやっと「細胞」という視点が設定される。それで、はじめにサイト「細胞くん」などを用いてそのイメージ化を図り、更にその概念化された構造の詳細を役割の観点で「細胞小器官」から取り扱う、という経緯はいかがであろうか。
*補足1:補足として扱ってはいけないことであるが、上述の「オモテ側とウラ側」という基準が生じる根拠は細胞の極性、つまり、細胞の基本的な性質からの取り決めである。細胞シートという概念はよって体内構造を考えるに必要不可欠「最小必須学習課題」である。その詳細は本田久夫著の「シートからの身体づくり」という中公新書1035(ISBN4-12-101035-3)に丁寧に説明されている。または、シートが変形して生物体ができる(1987)本多久夫:かたちの科学(p15-44)朝倉書店
(ISBN4-254-10058-2)、を参照。
*補足2:上皮細胞の足場依存性は細胞直下の基底膜に接着して成り立つが、筋細胞の足場依存性、つまりその基底膜とは、細長い筋細胞が寝袋のような基底膜に包まれて仲間と簀巻き状態で束になっている、というイメージである。神経細胞では神経膠細胞に守られ、または線維性結合組織の中をひょろ長く軸索が伸びた細胞である。詳細は別サイト「多様な形の細胞の考え方」を参照とする。
*補足3:「細胞シート」について一言。上皮組織の細胞シートは「体腔管腔その壁面」であり、肝臓のような実質器官であっても分かりやすい。では、神経や筋骨格は細胞シートなのかと問われると困ってしまう、がそれでもその考える筋道は以下と考える。
例えば、神経系の始まりは「神経管」でありその様態は「神経上皮」と呼ばれ、中空器官の上皮組織と類似と考える。筋骨格は発生初期には経時的に「体節→皮筋節→皮節・筋節・硬節」と呼ばれる。中胚葉由来のそれらの様態は「節」とか「板」と表現されるが、それらはつまり細胞が「節状・板状・シート状」に集合した様態用語である。分化の段階で再シート化状になると考えるとイメージが可能であろうと思う。どうでしょう、細胞の基本的性質とは「足場依存性と細胞シートの形成」であるというのは、やっぱりダメですか?
補足4:「細胞の基本的性質」というものはあるのか、と時々尋ねられる。確かに困る。考えれば数限りなく事柄が上げられる。しかし、その多様性をまとめるのが、限定的かもしれないが「実験検証」であろう。つまり、便宜的には「単位成立条件:細胞が生きるに必要な条件:最低必須要素」であり、それは「性質」の反映と思っても良い。人為的には「培養細胞実験に基づく仮説演繹的な考え方」ということが「基本」であろう。よって、本項では「培養細胞技術」の観点を取り入れ、生体組織細胞の様態との類似性から考察する、という経緯であるが、いかがでしょう。
体は「細胞」からできてくる。
体は「細胞と細胞間物質」でできている。
↓それなら、
生きてる細胞と生体由来の物質(細胞間物質)
があれば「形」ができるはず。
それらの性質や役割が解れば「形」ができるはず。
科学実験としてできるはず。
↓それなら、
お絵描き実験:動物培養細胞による形態形成
の基礎実験をしてみよう。
実験とはともかく何かを確かめること。
君は何を確かめたい?
(培養細胞実験はなぜ必要?)
|
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視点12:細胞(基本単位)
に関わるイメージ図と補足解説
体は細胞と細胞が生み出す細胞間物質で
できている(細胞説)
細胞構造と機能の基本、細胞とECM、
(ヒト細胞は約300種)
実践サイトは
:細胞構造と細胞くん,
G1.細胞の基本構造」,G3.多様な形の細胞
(画像をクリック: 左 Fig34 中 Fig35 右 Fig36 ) |
<補足解説#12:細胞>
階層区分「細胞」と言う視点に関して意識してほしいことは「基本単位」であり、その意味するところは「体の成り立ち」の大前提「細胞説:全ての細胞や細胞間物質は細胞に起源を持つ」である。よって「生きている」を意識すると「最小単位」となる。話し合いの基本「形・役割・仕組み・由来」という一般的な、しかし、様々な方向性(ベクトル)が生じる。一般的には教科「生物」が重視する「形と働き」あるいは同義の「構造と機能」であり、加えて「由来:細胞の共生進化」が上げられる。
つまり、上皮細胞、神経細胞、筋細胞など細胞の形(形態)は様々であるが、その基本構造は「膜で閉じられた構造体で、内部には丸い核があり、その間の細胞質にはミトコンドリアや粗面小胞体などの細胞内小器官がある」という解説である。その詳細は「細胞内小器官」という視点から別建てとして細かく取り扱う(という流れである)。加えて「マーギュリスの「共生進化」、真核細胞と原核細胞という概念が加わる。
よって、多様な細胞の形は「組織」の扱い、ここでは細胞の構造つまり「細胞内小器官」に話を進めます、となる。それで下位#13がある。以上で完結する。つまり、最上位「個体」から始めた時のように「細胞」についてもいろいろな話し合いの枠組みが生じる。
しかし、ここで意識したいこと(特に重要なこと)は、上位との連携であり、上記#11「細胞の基本的性質」で扱った「足場依存性や細胞シートの形成」である。つまり、細胞は基質に接着して生きている、仲間と配列して生きているである、ということから、また、次の「細胞小器官」の前提としても、そのイメージ化ができると都合がよい。それで、個人的には「細胞くんの描き方」という笑い話をこの区分に加えている。個体と同じように細胞を擬人化してその構造を描いてみるという方法である。必要な場合はそのサイトを参照してほしい。
以上であるが、これまで上述した階層区分の話を振り返ってみるとどこか腑に落ちないところが付きまとう。これは「実体と概念の連立」の難しさを表している。それで「実験学習」が必要となる。このWebサイトは「実演生物学」であり、つまり「実体と概念の連立」の補完を目指している。細胞については「細胞実験キット」でその補完を行っている。組織については最近では「バーチャル顕微鏡観察」などがその任を果たす。それらを見る視点は「細胞の基本的性質:足場依存性と細胞シート」であり、「体腔管腔その壁面:描いた線は何?」である。その経験値は大きい。つまり「知らないことは分からない、分かってしまえば当たり前」であり、その経験値が生物学の意義でもある。つまり「論より証拠・されどロジックも必要」という経験である。
*補足1:笑い話とした「細胞くんを描いてみる」であるが、本当は笑い話ではなく、多様な細胞形態、例えば神経細胞などのことを考えると「細胞くん」なしではことは済まないと個人的には思っている。つまり、分泌細胞やパラニューロンの話である。関心のある人はサイト「多様な形の細胞の考え方」を参照してほしい。
*補足2:階層区分で「-組織-細胞-細胞小器官-」であるが、「細胞が集まると組織」というところは一般に結合組織のことを考え戸惑うが、基本単位「細胞」とは上述したように「細胞説」のことなので、細胞間物質(コラーゲン線維など細胞が生み出す物質)のことも含まれている。
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視点13:細胞小器官(構成要素)
に関わるイメージ図と補足解説
1) 細胞構造の基本、2) 膜系構造体とその由来
(形・役割・仕組み・由来・その他)
実践サイトは G.細胞の基本構造
(画像をクリック: 左 Fig37 中 Fig38 右 Fig39 ) |
<補足解説#13:細胞小器官>
細胞は各種の細胞小器官(細胞内小器官)の配置と繋がりにより構成される。つまり、細胞小器官は細胞構造の要素であるが、細胞にはそれら小器官だけでなく可溶性の酵素や水も含めた各種のイオンや分子も含まれていることも忘れないでほしい。
この視点で意識してほしい事は、個体は「細胞シート」を起点としてその形をイメージする(#8の話題)が、細胞は「膜系シート構造」としてイメージし考えると都合が良い。つまり、細胞は脂質2重層を単位膜とする細胞膜、核膜に加え、ミトコンドリアも含め各種の小胞体(膜系構造物)から成り立っていることを意識する。核膜やミトコンドリア膜は2重膜であり、なぜなのとなるが、これに関連しては「共生進化」の理解が必要である。言わば、細胞とはシャボン玉のようなもの、シャボン玉なら融合も簡単であろう、という都合のよいイメージである。
すでに笑い話「細胞くん」があるので、教科書的な構造の理解は容易に進むはずである。膜構造体以外のものは原核細胞(細菌)に由来するなら話は更に容易である。
働きについてコメントすると、細胞はタンパク合成を行うが、外に分泌する場合は粗面小補体、小胞体輸送であり、これは膜系構造体としての利点でもある。細胞内で利用されるものは遊離リボゾームで合成されるとすると話は繋がる。細胞くんにはそれで「ソバカス」も必要などで、書き足してほしい。
小胞体は英語がendoplasmic reticulum である。レティキュラとは「網状」のことで、その昔、外国の人は顕微鏡で見た内部構造に多くの網状が見えたのでそのような名前である。日本語では正確に「袋」として扱っているが、初学者にとって学習の観点からどちらの名称がお得なのだろうといつも思ってしまう。上皮のエピセリユムでも同じである。人の理解とは、はじめのはじめが感覚的であることを考えると「・・、つまり・・」と重ねて理解/説明することは重要かもしれない。学習者においては発音つまり肉体労働はよって重要である。
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視点14:細胞生理の基本(概念化の論理)
に関わるイメージ図(概念図)
** 細胞自身は何をしている? **
2系6要素-器官系11区分の配置との対応
(細胞の分子生物学 第4部の構成:遺伝の基本とは?)
実践サイトは
H.細胞内機能と順列、「I. 遺伝の基本」
(画像をクリック:左 Fig40 中 Fig41 右 Fig42 ) |
<補足解説#14:細胞生理機能の基本>
細胞の構造(その要素の配置と繋がり)、つまり上記#13「細胞小器官」の理解が進むと細胞の「働き」も見えてくるはずである。それで、ここに視点#14「細胞生理機能の基本」を設定した。「細胞そのものは何をしているか?」という視点である。
さてどうだろう。細胞の基本的な生理機能を迷わず言い上げることは可能なのだろうか。もちろん、知らないことは分からないであるが、それなりなら可能であろう。では、それは「細胞の働き」の基本を言い表しているのだろうか。これは難問であり「模範解答を示してほしい」と言われそうなのでそのような質問はしないに越したことはないとなるが、それでも考える筋道はきっとある、と言いたい。
ではどうしよう。この場合は構造の要素「細胞小器官」に認めた事項を箇条書きにするのが適切である。つまり、構造とは「その要素の配置と繋がり」であるので、細胞小器官の役割が理解できていれば、それも成り立つ。では、その「繋がり」はどうしよう。これまた上述した器官系区分(#6)の始まりのように羅列的な取扱いになってしまう可能性があるが、それでもその考え方の基本は確かにあった。
つまり、器官系の場合は「動物生理の基本」として「2系6要素-器官系11区分とその順列」を設定した。これは恣意的であるが古典的(誰もが認めるお得な考え方)であり、生物系の基本的な考え方である。それで、これを細胞生理の基本としても取り扱う。つまり、図に示したように、器官系11区分とその順列に基づき、細胞の生理機能を分かり易く平易に言い表すという方法である。「細胞は・・・・をしている」という具合である。その事例は図に示したが、その平易な表現を難しそうに言い表せばFig42となる。さてどうだろう。
気になるのが、推測で成り立ったことが科学になるはずがないである。そのような恣意的なことで科学が成り立つか、である。そこで、世界的な教科書「細胞の分子生物学」を参照してみると、細胞の働きはその多くが「4部. 細胞の内部構造」に書かれている。専門書なので「働き」ではなく「構造」という区分である。器官系11区分との対応については記されていないが、Fig42に記した順列に沿った目次構成になっているようにも見える。つまり、多くの優れた研究者が熟考し構成した細胞の働き(内部構造)の説明は結果的には誰もが納得する分かり易い考え方になっているような気がする。
なお、この視点「細胞生理機能の基本」は、細胞小器官や細胞の上位に来ると本来はスッキリするのだが、学習者のことを考え#14とした。「考える」にはその前提つまりイメージが必要なので違和感はないと思う。
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視点15:巨大分子
に関わるイメージ図と補足解説
タンパク質って何・高次構造とは
・タンパク質合成の仕組みとは?
(生体機能物質:蛋白・核酸・酵素)
(実践サイトは「***」)
(画像をクリック:左 Fig43 中 Fig44 右 Fig45 ) |
<補足解説#15:巨大分子>
巨大分子という視点には「筋肉の構造」という事例を用いることも都合がよい。筋肉の場合、その巨大分子は「アクチン、ミオシン」と限定すると、それで「肉(食肉)って何?・筋肉の巨大分子はどこにある?」となる。なお、この視点には「蛋白合成・セントラルドグマ」という観点(要素)も付随するが、ここでは省略し、一部ではあるが、視点[A]のところに「遺伝の基本」という視点からその実践サイトを付記する。
例えば、筋肉と言えば筋収縮であり「アクチン-ミオシン系」を思い出すが、そのアクチンやミオシンとはタンパク質の基本単位であり、その原料つまり最小単位「アミノ酸」がペプチド結合し線維状に連なったものが、更に折り畳まれ立体的になった生体機能物質、つまり巨大分子(規則性に基づく分子鎖からなる「生体機能を示す最小構造物」)である。アミノ酸が「分子」、アクチンは「巨大分子」、そのアクチンが連なったアクチン線維は細胞骨格なので「細胞内小器官」という階層性である。
繰り返しとなるが、例えば、タンパク質は脂質などと同様に代表的な生体物質であり総称区分であるが、タンパク質と言えば「肉」であり、肉の主要部分は細長い「筋細胞」が束状に集合した細胞塊である。細胞なのでその中には細胞小器官の「細胞骨格」があるが、筋細胞はその機能(筋収縮)のため細胞骨格(アクチン線維、いわゆるアクチン-ミオシン系)が細胞内のほとんどを占める特化した構造である。その細胞骨格とは、球状蛋白のアクチン(巨大分子)が連結(重合)した糸状タンパク質(アクチンフィラメント)が束になったアクチン線維(アクチンファイバー)に、筋収縮のため別の巨大分子「ミオシン」(頭部がある線維状タンパク)が束になり、アクチン線維と規則的に並列した構造である。つまり、アクチン線維をミオシン線維の頭部で引っ張るの関係でありATPを消費し運動する。細胞骨格を引っぱり長さが変われば細胞は動くである。
ちなみに、筋線維と呼ばれる筋細胞も足場依存性であり、筋細胞はその接着基質コラーゲン膜に包まれ互い隣接結合し束になっている。そのコラーゲン膜とは、細胞内で作られた糸状の巨大分子「コラーゲン」が細胞外に分泌され3本鎖の太いロープ状のコラーゲン線維となり、それが更に薄いフェルト状の膜になったものである。なお、筋細胞にはミオグロビン(ガス運搬タンパク質)というヘモグロビンの半分の大きさの巨大分子も含まれている。ミオグロビンの量で「赤い肉・白身の肉」となる。
もうひとつ、上記の「筋肉の説明」は階層性そのものであることに気づいたと思うが、つまり「構造:要素の配置と繋がり」の説明である。よって、物質名に基づく段階的な構造図(概念図)を描き、その後に一般名を付記すると分かり易いはず。 構造を見る視点も必要である。
巨大分子という言い方は少し分かり難いが、細胞内で作られ細胞の内外で利用される「生体機能物質」である。一般には生体高分子という見方でもあるが、適当数の生体分子(アミノ酸や核酸など)が連結した物質(分子量で1万以上?)で生理生化学的な役割を担う物質であることから巨大分子(あるいは生体高分子)としたが、その定義?は簡単ではない。それでここでは「生体分子と細胞小器官との中間くらいのサイズで機能を示す生体物質」としたい。
イメージとなる用語は「DNA、酵素、多糖類」などである。乱暴な言い方であるが、物質なので物理的にその入れ物(例えば、細胞)を壊せば「そのまま」取り出すことができる、とイメージすると分かり易いかもしれない。また、元素(原子)→分子→巨大分子の並びで考える。「蛋白質・核酸・酵素」とすると有名な科学雑誌の表題となるがイメージとしては類似している。この視点で記述できることは能力的に以上であるが、あえて少しだけ付記すると・・。
例えば、細胞内には各種の酵素(アミノ酸が連結した構造が基本)やDNA(核酸が連結した構造)などの構造物質(巨大分子)があり、細胞外には分泌されたホルモン(情報伝達物質)などがあるが、それらは分子が連結し立体的な構造(高次構造)を成し機能を示す「物質」である。一般的な電子顕微鏡で観察してもその形状(外形)が見える程度の大きさなので、その構造は、直線的(1次構造)、平面的(2次元構造)、更に立体的な高次構造(3次元構造)、更にはその「単体:モノマー」が集合した間違いの無い生体機能性を示す4次元構造から模式図的に取り扱う。分子の配列や分子間結合によりその特徴(機能)が示される。なお、現在では「PDBj:protein data bank japan」があるのでとても親切である(左記略号を検索用語として参照)。
タンパク質は細胞で作られるが、細胞内で利用されるものと細胞外に分泌され利用されるものに区分される。それらタンパク質は巨大分子(生体物質)であり、細胞外に分泌されるタンパク質は、構造タンパク質(コラーゲンなど)、防御タンパク質(免疫グロブリンなど)、運搬タンパク質(アルブミンなど)、酵素タンパク質(外分泌物質など)、情報タンパク質(内分泌物質や細胞増殖因子など)、などに分けられる。ちなみに上述したアクチン、微小管の成分チューブリンは細胞内の構造タンパク質、ミオシンやダイニンは(運動タンパク質あるいは運搬タンパク質)である。
コメントすると切りがないので、この視点で意識してほしいことは「細胞の分子生物学」を参照してほしいである。その理由は少し専門的になるためであるが、「1.部位・2.形状・3.名称・4.繋がり・5.区分(構成)・6.役割・7.仕組み(物性)・8.由来、9.その他」の観点から物質名に対応させ意識してほしいので。例えば「DNA」などを得意とする人は是非上記9項目から考えてほしいと思っている。
なお、巨大分子の次の階層は分子(下記)であるが、上述した「高次構造」については、この視点(巨大分子)とは別建ての区分として「高次構造」を分子の上位に加え「巨大分子-高次構造-分子」という視座視点の順列の方が分かり易いかもしれない。巨大分子はその所在・分類やその基本的性質、高次構造ではその構造(要素と繋がり)と由来(タンパク合成、遺伝子発現)、次の#16「分子」では生体の最小素材の性質と代謝、という視点である。
*補足:体に関わる成分の大区分は「細胞性と非細胞性」であり、非細胞性は続いて「可溶性/液性物質・構造性物質」となる。細胞は「固定性細胞と遊走性細胞」のあとに4大組織区分である。成分も同様である。もちろん疑問が付きまとうので「その他」も重要である。
*補足2:多細胞動物なら誰でも持っているコラーゲン分子の種類は20種類?以上にもなり、その所在は細胞種に依存する。つまり、生体細胞は少なからず接着基質を分泌し自身の足場を適切に定めようとする。また、コラーゲンは多細胞化に不可欠な巨大分子であり、地球進化(8億年前の酸素濃度の上昇)などと関係したということになっている。また古来から日用品でもあり、よって「コラーゲンの科学」関係の本は興味深い。是非参照。
<先頭行へ移動 Table Topへ ・関連サイト:BioMTXへ>
視点16:分子 (生体分子と代謝)
に関わるイメージ図と補足解説
** 牛が草を食べたら牛乳ができた **
<5大栄養素と物質代謝/循環>
(糖、窒素、脂質、補酵素、
生体微量元素、核酸)
(実践サイトは「*****」:移動は左文字列をクリック)
(画像をクリック:左 Fig46 中 Fig47 右 Fig48) |
<補足解説#16:分子>
分子はもちろん肉眼的に見えない生体構造の最小単位であり、この視点で意識してほしいことは、生物学の基本「形と働き:構造と機能」であり、生体分子の基本的な区分と構造である。つまり、糖、アミノ酸、脂質、核酸、ビタミン、加えて生体元素が対象である。重要な物質名と構造の理解である(その詳細には生化学の対象である)。なお、分子は化学の扱いであり、物質は基本的に電気的中性を好むので膜電位などという「代謝」関連の見方が成り立つ。生体は常に物質代謝により成り立っている。 形は止まる事のない物質代謝で維持される。代謝が止まると形は壊れる。
よって重要なことはその代謝であり、生体分子は「循環」しているという見方である。つまり、クエン酸回路や尿素回路のようなサイクルであるが、サイクルという考え方は大変都合が良い。但し、そのサイクルの所々に機能性の観点から起点となる分子があるので、それは意識しよう。更に、物質循環も意識してよい項目である。「子牛が草を食べたら牛肉ができた」である。これは大変興味深い物質代謝である。考えてみよう。「ご飯を食べると何になる?・お米を食べると細胞の何が働く?・酸素欠乏になるとなぜ苦しい?」である。
分子まで来たが、生体分子は「炭素、窒素、酸素、水素に加え生体ミネラル/生体微量元素など」などの元素(原子)から成り立っているは言うまでもない。
*補足:解糖系-TCA回路を意識するとき、JR山手線の駅順や名前はかなり有効である。品川駅は「ヘム合成」の起点と考える。考えてみよう。
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A.「動物体に対する一般的な視座」
のイメージ図(概念図)
<形・役割・仕組み・由来・その他>
解剖組織学・生理生化学・発生遺伝学:細胞生物学
部位・形状・名称・繋がり・区分・役割・仕組・由来・他
(区分=構成、仕組み=物性/性質)
なに・なぜ・どうして・どのようにして
それ本当?
実践サイトは「I. 遺伝の基本:移動は左をクリック
(画像をクリック: 左 Fig49 中 Fig50 右 Fig51) |
B.「現実/実体の 枠組み/配置図」
のイメージ図(概念図)
A1. 現象/状況・ A2. 実体/実在・ A3. 本質/原型
(科学) ↑↓ ↑↓ ↑↓(技術)
B1. 役割/働き・ B2. 機能/仕組・ B3. 性質/物性
(実践サイトは「マクロ組織の話し合い」)
(画像をクリック: 左 Fig52 中 Fig53 右 Fig54) |
基本のイメージは以上です
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<終わりに>
視座:視点一覧16項目を記したが、もし通読している人がいればともかく疲れた、というのが感想ではないだろうか。同感である。読むほどに疑問が生まれ、時には混乱もしたのだろうと思うと心が痛む。例えば、小学校の1年生からはじめて毎年1コマ大学4年生までゆっくり考えてみるという方法が適しているというテーマかもしれない。大学4年生や生物教師であれば「この程度のことははじめから全てお見通しさ」であってほしい。さてどうだろう。
繰り返して言えば、生物学とは「もの言わぬ生物進化の成果物に替わってその成り立ちを通訳翻訳代弁カバーリングすること」であり、その基本的な視点は、形と働き(構造と機能)である。上記視点にはいつでもそのことが付きまとっている。それで羅列的にもなってしまうが、生物と言えば「形・役割・仕組み・由来・その他」であり、つまり、解剖組織・生理生化学・発生遺伝で、細胞生物学となる。 先進先端・DNA学と意気込んでもその基本に代わりはないのだと思う。「基本 Basic」なことは必要である(それをなぜか教えないのが現行教育かもしれない)。
いづれにしても「実体と概念の連立連携は難しい」がそれでも考える筋道「古典的なロジック」はそれなりに役立つということに気づいてもらえれば幸いである。
それらはともかく誰もが理解する「現実実体の枠組み(視点B)」を前提として成り立っている。それで慌てず騒がず適切な視点から考えてほしいと思う。また、平素な疑問は重要であり、共有できる形で取り扱うことも必要である。それで「部位・形状・名称・繋がり・区分(構成)・役割・仕組み(物性)・由来・その他」の9つの話し合い項目を設定してみた。
ところで、本編では所々に実践サイト「描き見て考える」の項目を紹介した。例えば「体の中身の描き方:立ち上がったサカナ」などであるが、知識に優れた人(例えば学校の先生など)はマンガチックなそれら素描に直感的な抵抗を抱く。学習とは「その場・その時・その課題」であるが、知識レベルとは無関係にその課題を導く「共有命題」の設定が可能な事も生物学の特徴ではないかと思っている。「ネコの前にサカナを置いたらどうなるか」である。
答えは一様ではないかもしれない・試験にはでない課題だと思うが、それでもそれらの共有命題はフェアな学習フィールドに繋がるのではと考えたい(学習の場にもフェアプレーが必要である)。それは卓越性(ひとつテーブルに向き合いながらも個人に適した科学のテーブルは幾つもある)にも関わることと思う。一生に一度の経験として「描いてみる」とそれなりに納得すると思う。自律性と同時にそれ以上に疑問がいろいろ生じるはずである。独創性ということも時にはあるのだろう。疑問を見る見つめる窓が開くはず、と思いたい。
*補足1: 本編を実践学習の場に取り入れたい時は、例えば「描き・見て・考え・話し合う」という事が適当と思っている。リンク先(実践サイト)へは、次の文字列〔描き見て考える〕をクリックして移動する。
*補足2:本編で記した事は、つまり、体の基本単位「細胞」の「基本的な性質」とはどのようなことかということを、俯瞰するようなことを縦上下一列に並べたということだと思っている。いわば当たり前の話であるが、学習者には視座視点も必要である。生物系の最小必須課題でもあり、基幹生物学の考え方である。よって、組織や器官の話は付け足しということではない。Nature・Science・Cell 、つまり、細胞というものを科学の観点からその本質を考えてみようという試み(共有命題)である。棚上げしたこともあるので、棚上げはいけないと思いつつではあるが、やはり必要なことは細胞シートの確認(細胞実験と組織観察)つまり「実体と概念の連立」に対する補完である。余人には代え難い高校生物教師のその前向きの姿勢には深く頭が下がる。感謝である。読んでくれて有り難う。
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<教師の想い:その1>
知らないことは分からない
・分かってしまえば当たり前
何かが気になる当たり前
・気になることはどうしよう
気になることは無視しよう
・気になることは大切にしよう
さて君はどうしよう!
なに・なぜ・どうして・どのようにして
きっと共有命題が助けてくれる
生きているからそう思いたい
:きっと経験値が窓を開くはず
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<教師の想い:その2>
これを見せたい・教えたい
・考えさせて・楽しくしたい
「なに・なぜ・どうして・どのようにして」
どんな疑問に答えよう。ともかく体の成り立ちだ!
1) 体の中身はどう描くの?
2) 体の薄切り2色で染めたらどうなるの?
3) シャーレの中のサカナの細胞、どんな姿で生きてる?
4) 生理食塩水はなぜ必要?、等張液って何だろう?
- 体は細胞からできている。細胞間物質でできている。
- 11区分でできている。2つの区分で6要素。
- 4大組織に3胚葉, 器官 組織に、細胞・物質。
- 姿の由来は胚葉性と咽頭胚。
- 色々いるけど多様性に統一性。
1) 大きく見れば管状構造(器官系)
2) 平たくみれば層状構造(組織)
3) そこだけみれば単位構造(細胞)
4) 見えないものは循環構造(物質)
止まらないから生きている。外部の環境、無視できない。
・ポンプが動けば塩水動く。
・濃度差・移動・等張状態(膜電位)
・形を支える物質代謝
生物と云えば「形・役割・仕組みと由来」、
とにもかくにも実験しよう!
「実験」とはともかく何かを確かめること。
君は何が知りたい・確かめたい!!
<部位、形状、名称、繋がり、区分(構造)、
役割、仕組み(物性)、由来、etc>
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<別表:動物体の階層性/連続構造区分>
このテキストの上部に表「視座:視点一覧」を付したが、一般的な階層性の表記としては複雑すぎる/混乱する、という声も聞こえてくる。それはそれなのだが、それで一般的な表記法に従い、以下に改めて別表「視座:視点一覧」としてまとめてみた。内容の筋は上記とほぼ同様であるが、特徴として階層区分に対する「共有命題・その課題」という設定とした。その具体的な考え方が「視点」であり、その細かな要素をイメージしてみる/考えてみるという形式である。いずれにしても学習者には基本的な「視座・視点」が必要である。これでどうでしょう/いかがでしょう。
下表「見方/考え方/進め方」のPDFはココから |
<階層構造性の前提>
体は1細胞(受精卵)を起源とし「全ての細胞と細胞間物質」は細胞から生じる(細胞説)。その話し合いは、形・役割・仕組み・由来・その他。構造は「要素の配置と繋がり」と考え、要素間の繋がりは役割の起点を示す。
|
区分 |
命題・課題
その視点 |
その要素/構成/事例
(キーワード) |
|
T |
個体 |
<共有命題>
サカナの縦縞・四肢・尻尾
を話し合う。
<その課題>
科学論・多様性と共通性・体の座標
を考える。 |
|
1 |
1次
体区分 |
体部位・体軸・体断面
・体内腔・体節 |
2 |
2次
体区分 |
体壁性器官/体性系/背側
内臓性器官/臓性系/腹側 |
3 |
骨格系 |
骨パズル:頭部骨格、
鰓弓系、肩帯/腰帯、 |
U |
器官
系 |
<共有命題>
ネコの前にサカナを置いたらどうなる か を話し合う。
<その課題>
器官系区分と動物生理の基本
を考える。 |
4 |
動物
生理の基本 |
2系6要素
「受容—伝達—実施、
吸収—運搬—排出」+α |
|
5 |
器官系の区分 |
器官系11区分
とその順列・配置・役割 |
V |
器官 |
<共有命題>
体の中身の描き方:描いた線や形とは
何? を話し合う
<その課題>
体構造の側面俯瞰図と主要器官
を考える。 |
6 |
器官
と臓器 |
その所属・繋がり・役割 |
7 |
体腔
管腔その壁面 |
細胞と細胞シート
上皮組織
:上皮・中皮・内皮 |
|
8 |
体内構造の方向性 |
表面と裏側
(オモテ側とウラ側)、
その規則性 |
W |
組織 |
<共有命題>
体の薄切り2色で染めたらどうなるか
を話し合う
<その課題>
4大組織
:上皮組織・結合組織・筋組織
・神経組織 を考える |
9 |
組織
区分と要素 |
4大組織
(上皮・結合・筋・神経)、
細胞と基質 |
10 |
所在の根拠 |
発生学的な由来
(シート構造の変化と規則性) |
11 |
結合
組織の考え方 |
ウラ側世界の特徴と性質
:中胚葉由来の細胞と物質 |
X |
細胞 |
<共有命題>
細胞をシャーレに入れたらどうなるか
を話し合う。
<その課題>
多様な細胞とその原型・細胞くん
の描き方 を考える。 |
12 |
細胞
構造の基本 |
膜系構造体、
細胞の起源(共生進化) |
13 |
細胞の基本的性質 |
足場依存性
と細胞シートの形成
:点・面・立体 |
|
14 |
多様な
細胞の
考え方 |
形態と機能
:細胞くん
とパラニューロン、etc |
Y |
細胞
小器官 |
<共有命題>
細胞自身は何をしている
を話し合う。
<その課題>
考える筋道・古典的ロジックの展開
を考える。 |
15 |
分類
・構造・機能 |
機能装置としての理解 |
16 |
細胞
生理の基本 |
考察の道筋
:2系6要素11器官系区分
との対応 |
Z |
巨大
分子 |
<共有命題>
筋肉は何からできている
を話し合う。
<その課題>
生体高分子とは?
:種類・形・役割・仕組み・由来
を考える |
17 |
筋
構造と
階層性 |
構造と名称区分
(様態名称と実体名称) |
18 |
巨大
分子の種類 |
分泌性物質と内在性物質、
構造と役割 |
19 |
遺伝
の基本 |
セントラルドグマ
(DNAから蛋白質)、
高次構造 |
|
[ |
分子 |
<共有命題>
子牛が草を食べるとなぜ成長するか
を話し合う
<その課題>
生体分子とは?
:種類・形・役割・仕組み・由来
を考える |
20 |
生体
分子の種類と構造 |
5大栄養素+α
:糖・アミノ酸・脂質・核酸・補酵素・生体元素 |
|
21 |
物質の代謝と循環 |
糖代謝・窒素代謝・核酸代謝:起点と繋がり |
22 |
エネルギー変換 |
ATP合成、膜電位、
補酵素の役割 |
話し合い項目:部位・形状・名称・繋がり・区分(構成)・役割・仕組み(物性)・由来・他 |
上記「別表」について改めて記述すると教科書のようになりそうなので省略するが、意図したいことは、なぜ「動物体の階層性という考え方や共有命題あるいは基本概念」が必要なのか、という事である。
繰り返しとなるが生物学習は「経験科学」の側面が強い。よって、知識がないと何かと困る。時に「模式図・用語項目・箇条書き」にもなってしまうが、それでも考える筋道はあるし必要である。つまり、困った時・疑問を感じた時、振り返る「基本/Basic」がないと「思考が停止する・話し合いができなくなる」からと言いたい。拠り所がないと「棚上げ」のままになってしまう。「決め付け」のためではない。「基本」をそう扱ってはいけない。疑問を大切にする拠り所が「基本」である。
ルールのないスポーツはない。大多数が許容の範囲でルールは成り立っている。学習の場にもフェアプレーは必要であり、それは「卓越した学習フィールドに立つためのはじめの一歩」でもある。
今現在「視座:視点一覧(動物体の階層性)」は新規な話「これまで聞いた事がない」として受止められることもある。しかし、きっといつかは「当たり前」として学習者は受止めている、という状況もあり得るかもしれない。つまり、未来においても「生物の形態や構造」はきっと変わらない、更に生物学習は未来においても必要であろう。
なぜ我々は生物学を学ぶのか、という疑問はかなり重要で複雑であるが、人間が考える対象のひとつには自然があり、その主たるものに生物系がある。その基本的な「ロジックの取り扱い」が生物学習であろう。つまり、基本があれば「話し合いの場」が継続するはず、を期待したい。ロジックのない場は何となく淋しいような気もする。「なに・なぜ・どうして・どのようにして」は知識レベルや学習進度/深度とは関係はない。人が感じる1次情報であり、生物学の理念「実体と概念の連携/連立」のためである。好き嫌いは別として、誰もが大切にできることのはず、と思いたい。フェアーな学習の場も必要である。
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