(諸注意:関連サイトの補足はこのパネル下欄です)
<目 次>
1. はじめに:メッセージ
2. 実験魚に対する配慮
3. 必要物品:主な道具
4. 事前準備と注意
5. 動物の体と解剖法の概要
6. 解剖操作:手順と観察
手順1:腹腔(フックウ)域の操作
手順2:腹腔内構造の観察、確認事項
手順3:腹腔内器官の摘出と観察
<休憩と記録>
手順4:口腔/コウクウ・鰓腔/サイクウ、
手順5:心臓:囲心腔/イシンクウ
手順6:頭蓋(トウガイ)部・眼球(ガンキュウ)部
6.1:眼球部、6.2:脳出し、6.3:加温熱固定法、
手順7:その他:背骨(脊椎骨)、腎臓
7.ボタン (図/Fig )のリスト
8.用語(音読呪文)・・ボタン[Check]を押す(右パネル右下)
<1. はじめに:メッセージ>
私たちは、何故「からだの成り立ち」を学ぶのでしょう。
背骨のある動物を「脊椎動物/セキツイドウブツ」といいます。サカナもカエルもそうです。カメ、トリ、ブタ、サル、みんな同じ「背骨」のある動物です(ボタン1)。ですから、サカナもサルも同じグループの一員です。でも、あなたは、本当に、そう思えますか。サカナとサルを比べてみる(ボタン3)と、何が同じで、どう違うのか、よく考えると解らなくなりそうですね。
今日はサケ科魚類のニジマス(rainbow trout/レインボウ トラウト:ボタン5)を材料に解剖実験を行います。「科学実験」として行います。実験とは「ともかく何かを確かめること」です。皆さんは何を知りたいですか・確かめたいですか(ボタン4)。
もしかしたら、君はサカナではなく哺乳動物を使って確かめたいと思っているかもしれませんね。でも残念ながら、今日は魚類/ニジマスです。
昔から研究者は、魚類のからだの成り立ちを調べながら、サルやヒトの身体のことを考えてきています。今日はその一部を紹介します。
実際に解剖を行うと、考えても・イメージしてもハッキリしなかったことがいろいろ実感できるはずです。同時に新しい疑問がたくさん湧いてくるものです。その疑問や「困ったな」と思うことを大切にして下さい。すぐ答えは出ないかもしれませんが、きっと、その疑問や好奇心があなたのバックボーン(背骨)になるはずです。
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なお、解剖とは「やみくも」に切り刻むことではない。一応手順がある。それを説明するには、理解するには、記述解説文が必要である。実演操作を見て記憶に従って『サクサク』行なうのは適切ではない。サカナでもネズミの場合でも同じである。好ましい事ではない。面倒だけども、下記の記述解説文を読みながら、少しずつ確認しながら進めることが必要である。自分自身の「経験値」を大切にするために必要がある。
<2. 実験魚に対する配慮>
昔から、動物実験を行うにあたっては、例えば「動物実験の自戒」として「誠心感謝の意を以て・・自ら戒むること肝要なり」(動物実験解剖の指針(1964)岡村周諦、風間書房)となっている。「感謝の自戒」である。
- つまり、実験魚を解剖に供した君には、今回の実験から「何を学び、何を考え、今後、どのように発展させたいか」を積極的に考えてほしい。すぐ答えを出すことではないが、自分の経験値を大切にするため、実験ノートに実験中の事や調べたこと考えた事などを丁寧にまとめるように心掛けてほしい(感謝の自戒)。
- もし、実験動物の解剖に「強い抵抗」を感じる人は、無理して解剖操作を行なわない方が良い。観察と記録を担当する、または実験の様子を観察する、などにより「自分の経験値」を高めることができれば、術者と同様の学習になる、はず。
- 加温熱固定法という本格的な方法もあるので、適時、試してみる。
<3. 必要物品:主な道具>
専門的な解剖道具でなくてもよい。よく切れるハサミや日曜品などで代用する。
1) 良く切れるハサミ 大,小(調理用、文具用ハサミ)、
2) ピンセット、3) 箸(はし)、4) 柄の長いスプーン、
5) 替え刃ナイフ(文具ナイフ)、6) スポイト、
7) 先端の鋭い小型のハサミ(眼球摘出用)、 8) タオル、
9) 紙タオル(沢山)、10) ポケットティシュ(3パック)、
11) 70%エタノール、12) お酢(消臭用)、13) 新聞紙、
15) 食器用洗剤(手洗い脱臭用)、
必要に応じて:
1)麻酔剤(フェノキシエタノール)又は「氷」、2)マスク、
3)摘出臓器を収納する小皿(シャーレ)、
4)解剖バット(食器用トレー)
<4. 事前準備と注意>
はじめて行う「解剖実験」には、「失敗した、とか、成功した」ということはありません。各自が「実験の手引き」の手順(テジュン)に従い、丁寧に操作(ソウサ)を進め、いろいろな事を「実感する・疑問に思う」ことが大切です。
- 実験を行なう前には、「解剖しながら何を確かめたいか」ということで、自分の疑問などを「実験ノート」に箇条書きにしておきます。または、簡単な模式図(モシキズ)なども用意してから実験を始めましょう。又は「管状構造に基づく器官系」の概念図(ボタン2)を使用する。
- 解剖前や術中、気分がすぐれない時には必ず休憩すること。無理して実験を進めてはいけない。周りの人の状態にも配慮してあげること。
- 解剖中は不必要に声を出さない。テキストを参照しながら自分のペースで行う。あわてず騒がず行うことが肝要。途中で時間切れになっても困ることではない。同じ実験時間内に「何を学ぶか」である。時に、少しだけ勇気も必要。
- 下記の操作の所要時間は3時間程度と考える。「時間が短いから素早く操作を行なう」は良くない。全部の操作行程を行なうことが目的ではない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・- 解剖を行なうサカナは、新鮮な個体を使用します。実験魚が生きている時には、麻酔剤 フェノキシエタノール(液状の試薬:2リッターの水に対して約2mlの試薬を加える:数分で鎮静する濃度)で実験魚を完全に過剰麻酔させます(10分くらい放置する)。取り上げても動かない事を確認の上で実験を開始する。
- 又は、クーラーボックスなのに多量の氷を含む氷水中に長時間放置します(過度の氷冷麻酔)。実験前には必ず動かなくなっていることを確認する。
- 魚体表面の水分や粘液などをタオル・紙タオルで拭き取る。必要に応じて70%エタノールを吹きかけ、粘液等を凝固させ拭き取る(必要に応じ、希釈した「お酢」を噴霧し臭気をおさえる)。
- 「臭い」に強い抵抗を感じる人は「マスク」などを用いる。解剖操作中は手指に粘液など生体由来物質が付着する。よって、身近なところに「手拭きタオル」を装着すること。
- 魚類の解剖では魚体を手指で保持する必要があるため、グローブ(手袋)を用いると粘液などのため手元が滑りやすくなり時に危険である。よって、用いない方が安全である。
- 魚体が粘液などのため滑りやすく、固定し難いやハサミの刃先が滑る時には、紙タオルなどを「滑り止め」として使用する。紙タオルなどでしっかり保持する。但し、刃先に手指が来ないように注意する。
- 手指に粘液が粘着した場合は、石鹸や水で洗い流す前に、紙タオル等で拭き取る、又は70%エタノールを噴霧し粘液凝集の前処理の後に取り除くのが理にかなっている(アルコールアレルギーの人は要注意、火気厳禁)。
- 実験魚が多量に出血したらポケットティッシュ大の紙タオルを出血部位へ軽く押しあて、拭き取る(事前に適切な大きさの止血用の紙タオル、又はポケットティッシュを用意しておく)。
- 出血等で諸臓器が不明瞭になったら水道水(本来は生理食塩水)で洗い流し、その後に操作を進める。
- 消化管の中は当然の事ですが臭いがします。消化管を切ると消化管の内容物が出てきます。紙タオルの上などに内容物を受け、捨てる。更に必要に応じて水洗してきれいにして実験を進めます。
<5. 動物の体と解剖法の概要>
動物の体の中には「骨や筋肉や内臓」などいろいろなものが入っています(ボタン2)。但し、でたらめに詰まっている訳ではありません。体の中には幾つかの空間、つまり、体腔(タイクウ)と呼ばれる内臓などが収まる「部屋」が用意されています(ボタン6,7)。
サカナで云えば、胃や腸や肝臓などを納める腹腔(フククウ)、心臓が入っている小部屋、つまり囲心腔(イシンクウ)、鰓(エラ)が入っている口腔(コウクウ)/鰓腔(サイクウ)、そして脳が納める脳頭蓋腔(ノウトウガイクウ)です。ちなみに、「腔」の字は「コウ」「クウ」、どちらの読み方でも正しいです。
ですから、解剖実験ではそれら体腔の中がきれいに露出するような操作に心掛けます。その上で体腔に収まっている臓器や器官やその「つながり」を丁寧に観察する事が主な目的になります。
そのためには、はじめに、体腔の周囲を被う筋肉(体壁/タイヘキ:体表の下にある筋肉の層/体側筋)を切り開きます。つまり、体表面にハサミをあて皮膚や筋肉を切り開き、体腔の一部を露出させる作業操作が最初になります。
はじめての人でも丁寧に同時に勇気を持って、体表から体壁にあたる筋肉を少しずつ切れば、自然に体の中の空間/体腔に到達します。心配はいりません。落ち着いて行ないましょう。
<6. 解剖の手順:概要(ボタン6.7,8.9,10)>
- 時間があれば、はじめに、実験魚の外部形態を模式図として描く。部位名称も記入する(ボタン5)。または、「管状構造に基づく動物体制(概念図:ボタン2)」を白地図として利用しながら解剖操作をすすめる。疑問や確認したい事をメモしておく。例えば陸上動物との違いなどに対する疑問などは大切にする(思いついたらその場でメモする、箇条書きにする)。
- 下記の手順は、(1)腹腔内の構造→(2)口腔・鰓腔内の構造→(3)囲心腔内の構造→(4)頭部の中枢神経系の構造→(5)その他(腎臓・椎骨摘出など)の構造、の順である(模式図を参照:ボタン7, 8, 9)。
- 解剖操作に必要な時間は約3時間程度と考える。途中で休憩を入れること。
手順2:腹腔内器官の観察: ボタン15,16など、また、[Check]ボタン
<腹腔内の確認事項>
図8などを参照しながら(Checkボタンも)、下記のA〜Gの器官などについて、以下の事項を可能な範囲で確認する・記録する。
(1)名称、 (2)形、 (3)部位・連絡/つながり、(4)色、(5)触感
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A:食道(ショクドウ), 胃(イ), 幽門垂(ユウモンスイ)、腸(チョウ)、
肛門(コウモン)
B:肝臓(カンゾウ)、胆嚢(タンノウ)、膵臓(スイゾウ)
C:脾臓(ヒゾウ)、
D:鰾(ヒョウ/浮き袋)、
E:生殖腺(セイショクセン):精巣 or 卵巣
F:腎臓(ジンゾウ)、輸尿管(ユニョウカン)、
G:その他:血管/門脈、肝静脈、腸間膜、腹腔内壁
手順3:腹腔内器官の摘出と観察: ボタン15,16など、また、[Check]ボタン
< ここで一休み:ボタン17>。
腹腔部は終了。実験台の整理を行なう。
リフレッシュしながら、実験ノートを確認する。
手順6:頭蓋(トウガイ)部・眼球(ガンキュウ):ボタン21,22
手順は、眼球部を行ない、その後、頭蓋腔の「脳だし」を行なう。 未固定状態(鮮魚状態)で頭蓋腔の中の脳を取り出す「脳出し」が難しいと感じたら、操作途中でも、頭部だけを「熱湯」に浸し(加温熱固定法)、脳/神経を固化固定した後に行なうと操作が容易になる。
- 頭部の切断分離:大型ハサミで、頭部を(8)線で切り落とし、頭部表面を水洗または紙タオルできれいにする。
<7. ボタン (図/Fig )のリスト>
Fig1 いろいろな形の脊椎動物、 Fig2 脊椎動物の概念図、
Fig3 サカナとヒトはどう違う、 Fig4 解剖とは?・解剖では?、
Fig5 外部形態と名称、 Fig6 4つの体腔、 Fig7 4つの体腔と内部概要 Fig8. ニジマスの内部構造、 Fig9 解剖の手順:概要1、
Fig10 解剖の手順:概要2、 Fig11 手順1:体壁の切開、
Fig12 手順2:腹部正中体壁の切開、
Fig13 手順3:腹部体側体壁の切開、 Fig14 手順4:腹部体壁の除去、 Fig15. 手順5:腹腔内臓器の観察、 Fig16 体内構造の模式図2、
Fig17 休憩、 Fig18 手順6:鰓蓋の除去、
Fig19 手順7:口腔鰓腔の切開、 Fig20 手順8:胃心腔と心臓、
Fig21 手順9:頭部の切り離し、 Fig22 手順10:脳・眼球の摘出、 Fig23 Q:規則性は?、 Fig24 四肢動物との違い、 Fig25 腹面図の比較
以上:おわり
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